「印鑑登録証の偽造」よくある地面師詐欺から一変…土地取引に応じた経営コンサルタントが語る、4億円取引後に起こった”まさかの展開”
Netflixドラマで話題に火が点き、もはや国民的関心事となっている「地面師」。あの人気番組「金スマ(金曜日のスマイルたちへ)」や「アンビリ(奇跡体験!アンビリバボー)」でも地面師特集が放映され、講談社文庫『地面師』の著者である森功氏がゲスト出演した。同書はすべて事実を書いたノンフィクションであり、ネトフリドラマの主要な参考文献となっている。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 不動産のプロですらコロッと騙されるのだから、私たち一般人が地面師に目をつけられたらひとたまりもない。そのリスクを回避するためには、フィクションであるドラマよりも、地面師の実際の手口が詳細に書かれた森氏のノンフィクションを読むほうが参考になるだろう。 地面師たちはどうやって不動産を騙し取るのか。森功著『地面師』より、抜粋してお届けしよう。 『地面師』連載第66回 『「2億4000万を騙し取る」も有罪にできず…地面師グループの「緻密な計画」を暴くべく奮闘する“警視庁捜査2課”の「苦悩」』より続く
始まりは通常の地面師詐欺の手口から
事件の発生は、2016年春のことだった。他の地面師詐欺と同じように、春山自身の知らないあいだに、土地・建物が千葉県の建設会社に売却されたことになっている。 だが、単なるなりすましの地面師詐欺ともやや様相が異なるように感じた。劇場型詐欺とでもいえばいいのだろうか。事件はよりいっそう複雑な経過をたどっていた。くだんの土地取引にタッチした経営コンサルタントが、その内幕の一端を明かしてくれた。 「もともとこの物件は、都内の地上げ屋が目をつけていて、春山のところへはその手合いが頻繁に出入りしていました。春山老人には子供がなく夫婦2人で住んでいたが、奥さんが病気で施設に入り、本人はフィリピンパブに入り浸りになってしまったらしい。それで、あの家にはほとんど寄り付かなくなった。たまにしか帰ってこないので、家も庭もあのように荒れてしまったのです」 地面師にとっては、そこが付け目だ。関係者の証言をもとに再現すると、事件は、印鑑登録証の偽造という通常の地面師詐欺のパターンから始まったようである。 「実印を失くしてしまったので、新しい印鑑を登録したいのですが」 16年3月28日、春山を名乗る70がらみの老人が中野区役所を訪れ、窓口でこう切り出した。
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