週末の大渋滞どうなった? 東京湾アクアラインの通行料金を「時間帯ごと」に変えてみた結果
混雑回避と新料金制度
東京湾アクアライン(以下、アクアライン)の渋滞緩和のため、時間帯によって通行料金を変える「ロードプライシング」の効果が明らかになってきた。ロードプライシングとは、特定の道路や地域、時間帯における自動車利用者に対して課金することにより、自動車利用の合理化や交通行動の転換を促し、自動車交通量の抑制を図る施策のことを指す。 【画像】多い?少ない? これが60年前の「東京湾アクアライン」です(計13枚) アクアラインは、千葉県木更津市と神奈川県川崎市を結ぶ全長15.1kmの海底トンネルと橋梁からなる有料道路である。1997(平成9)年の開通以来、首都圏と房総半島を結ぶ重要なアクセスルートとして、週末・休日の昼間を中心に大渋滞を引き起こしてきた。特にコロナ禍以降、首都圏から車で日帰りレジャーが楽しめる観光地として房総半島が見直されたことで、それが顕著になっていた。 こうした状況を受け、国土交通省と千葉県は、2023年7月22日から2024年3月31日までの土日祝日に、社会実験として自動料金収受システム(ETC)の時間帯別料金(ロードプライシング)を実施することを決定した。具体的には、平日は普通車の通行料金が終日800円だが、土日祝日は時間帯別の料金体系を次のように設定した。 ・13時から20時(混雑時):1200円 ・6時から13時、20時から翌6時(閑散時):600円 関連報道や資料などをまとめると、この社会実験で期待されていたのは、 ・ピーク時間帯の交通量減少と渋滞緩和 ・利用者の行動変容 ・観光需要の喚起 ・物流の効率化 である。
渋滞解消、観光に新風
実際にどのような効果があったのだろうか。2024年1月15日、効果を検証する中間報告会が千葉県庁で開催された。公開された資料によれば、ロードプライシング導入後の交通量や所要時間の変化には、特徴的な傾向が明らかになっている。要点を次に記してみよう。 土曜日の場合、割増料金が適用される13時から20時の時間帯で、交通量が5.8%減少した。これは前年同期と比較した数値だ。 ・本線料金所 ・インターチェンジの流入部 で取得したデータを詳細に分析したところ、料金変動の幅が大きい区間や時間帯で、特に顕著な減少傾向が見られた。 一方、日曜日は全体の交通量が1.9%増加している。しかし、その多くは割増時間帯(15時から18時)の前後、つまり朝10時から12時、および20時から22時の時間帯にシフトしていることがわかった。これは、割高の料金設定によって利用者の一部が混雑を避ける行動を取った結果、ピーク時間帯の交通需要が緩和されたと分析されている。 ETCデータを用いて区間ごとの所要時間を算出したところ、ロードプライシング導入前と比較して、渋滞による損失時間が大幅に短縮されていることも判明した。最大で31.2%、日曜日は21.4%の減少を記録した。特に混雑のピークとなる時間帯では、 ・土曜日:34分 ・日曜日:19分 の短縮効果があった。土曜日の割増時間帯における交通量の減少率は、事前のシミュレーションを上回る結果であり、料金施策が需要の平準化に直結することを示唆している。 所要時間の短縮効果は、渋滞の早期解消や再発防止にも寄与したと考えられる。実際、10km以上の渋滞の発生回数が3割減少するなど、道路の安定的な運用に貢献した。 ロードプライシングは渋滞緩和だけでなく、千葉県内の観光にも好影響を及ぼしている。中間報告によると、アクアライン経由で千葉県を訪れた観光客の1日あたり平均滞在時間が、導入前と比べて 「2割増加」 して、6.42時間に達した。渋滞が緩和されたことで、観光客がゆっくりと観光を楽しめる環境が整ったためだと考えられる。 また、携帯電話の位置情報を活用したビッグデータ分析の結果、鴨川市内のレジャー施設に立ち寄った人が、他の観光施設にも足を運ぶ傾向が高まったことが明らかになった。アクアライン経由でのアクセス改善が、観光客の周遊行動を促進しているのだ。