消費者を欺く「ダークパターン」 安易なクリックが購入トラブルに 消費者庁が規制を検討 木村祐作
いまインターネット上で問題になっている「ダークパターン」という言葉をご存じだろうか。これは“闇バイト”募集やオレオレ詐欺などを指すのではなく、インターネット通販会社やEC(電子商取引)モールを運営する事業者などが、消費者を焦らせたり惑わせたりして、自社にとって都合の良い選択へ誘導するという手法のことだ。 ただし、この方法は日本では必ずしも違法行為に当たるわけではないため、日本ではダークパターンが野放し状態になっている。 ダークパターンとは何か。本稿ではその一事例として、ウェブサイトにアクセスした消費者の情報を記録する「Cookie」(クッキー)の問題を取り上げたい。 ◇EUでは違法 表はダークパターンの概念を整理したものだ。クッキーに関しては、規制が進む欧米と異なり、日本ではクッキーの利用をめぐり、いわば“ダークパターン天国”となっている。 消費者はウェブサイト上でクッキーの利用を承諾すると、再びそのサイトを訪れた際に自動的にログインできたり、ECショッピングの買い物カゴに入れた情報を保持できたりするメリットがある。その一方で、個人情報が収集され、消費者が想定していない目的で利用されたり、悪用されたりするおそれもある。 衛生用品・食品を扱う有名企業A社の通販サイトにアクセスすると、画面の下にクッキーバナーが出現し、「サイトの閲覧を継続された場合、Cookieの利用に同意したものといたします」という説明とともに、「承諾する」のボタンのみが設定されている。 また、大手調剤薬局チェーンのB社のサイトでもクッキーバナーが出現し、「引き続きこのサイトを利用・閲覧すると、お客さまが当社のCookie利用に関するポリシーに同意したものと見なされます」という表示とともに、「同意して閉じる」のボタンのみが出る。 大多数の消費者はこうした説明を受け入れて、「同意する」「承諾する」というボタンを押して、視界を遮るクッキーバナーを消しているのではないだろうか。しかし、A社・B社のクッキーバナーは、EUなどでは典型的なダークパターンに該当し、違法となる。海外で違法となるクッキーバナーが、日本では当然のように多くの企業で用いられているのが現状だ。