現代アートとは? ファンが待ちわびるNYの秋 “もはや体の一部”
世界の政治、経済、文化の中心地ともいえる米ニューヨーク。世界中から人や最先端の粋が集まるこの刺激的な街が、現代アートで熱くなる季節が秋です。この時期、ニューヨーク各所のギャラリーでは、趣向を凝らした展示に出会えます。ちょっと取っつきにくくて、よく分からない現代アートも、この街にいると“体の一部”のように感じられるかもしれません。 【動画】そうだ川を渡ろう。地下鉄工事も後押し、ニューヨーカーに好評フェリー移動 米ニューヨーク・ブルックリン在住のライター、林菜穂子さんの報告です。
世界のアートをリードする「ガゴシアン」
ニューヨークの夏はレイバーデー(Labor Day)が終わると一気に秋に向かう。労働者を讃えるレイバーデーは9月の第1月曜日の祝日だが、カレンダー上は夏の最後の連休となるため駆け込みでビーチに行ったり、旅行に出かけたりする人も多い。が、帰ればすぐに仕事や学校に戻らなくてはならず、しかもこの時期、朝晩の気温がぐんと下がるので気分がつい落ち込みがちになる。もうそこまで来ている長くて厳しい冬を予感させるのだ。 だからこそ、と言おうか、そんなニューヨークの短い秋を待ちわびる人たちも大勢いる。アート好きの人たちだ。 ここニューヨークは1000とも1500とも言われるギャラリーが立ち並ぶ世界一の現代アートの街。レイバーデーの連休が明けると数多のギャラリーが街の至るところで秋の展覧会をスタートさせ、そのアートシーンは一気に華やぐ。
例えば、世界のアートシーンをリードする現代アートのギャラリー「ガゴシアン」は、ニューヨーク市内の6軒を含め、世界中に18ものギャラリーやショップを持つ。その一つ、チェルシーの24丁目にあるギャラリー前には、予想通り、すでに人だかりが出来ていた。まだ日が暮れるには少し早い時間。かき分けるようにして奥へ進むと、また人、人、人の波。そこに見たのは大きな抽象画にネオン管を仕込む作風で知られるメアリー・ウエザーフォードの「私は灰色の鯨が行くのを見てきた ~I’ve Seen Gray Whales Go By~」(10月15日まで555 West 24 St.で開催中)のオープニングだ。 展示初日となる「オープニング」は、アーティストにとってもギャラリーにとっても重要な日になる。いち早く新作を観たい常連客、アートファン、コレクターたちがギャラリーに駆けつけて、その作品の評価が明らかになるからだ。