元横綱・祖父と同じ…大関5場所目での初優勝「琴桜」の快挙と「景気回復」、意外な共通点【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
大相撲九州場所を14勝1敗で初優勝した大関・琴桜。琴桜の今回の快挙と、祖父で先代師匠の元横綱琴桜(故人)の初優勝時の景気には、類似性があるようで……。本稿では、景気の予告信号灯として、大相撲九州場所を取り上げます。エコノミスト・宅森昭吉氏の解説をみていきましょう。 【早見表】毎月1万円を積み立て「預金」と「NISA」を比較…5年~40年でどれくらい差がつくか
九州場所で大関・琴桜が14勝1敗で初優勝、66勝で年間最多勝
九州場所で大関・琴桜が14勝1敗で悲願の初優勝を果たしました。21年ぶりの大関相星決戦となった豊昇龍との結びの一番で、はたき込みで勝ちました。NHKのインタビューでの受け答えで、勝利の瞬間に関しては「がむしゃらだったので覚えていない。相手が土俵に落ちていたので、やっと勝ったんだなと」と話しました。 「琴桜」という名前が優勝賜杯に刻まれたのは、祖父である初代が14勝1敗で5回目の優勝を果たした1973年名古屋場所以来51年ぶりのことです。今年の初場所後に大関に昇進した大関・琴桜は、初代と同じく大関5場所目で初優勝。来年初場所は、13勝2敗で準優勝した豊昇龍とともに横綱昇進に挑戦することになりました。 大関・琴桜は今年の白星を66個積み重ね、単独での年間最多勝も決めました。今年は関脇だった初場所で13勝を挙げ場所後に大関昇進、年6場所中5場所で2ケタ勝利を挙げました。 祖父・孫とも”琴桜”の大関昇進と初優勝は景気の拡張局面に 祖父の初代琴桜は、突き押し、ぶちかましと、のど輪で一気に攻める押し相撲を得意として、「猛牛」と呼ばれました。1967年秋場所では2横綱2大関を倒して11勝4敗という成績を残し、場所後に大関へ昇進しました。1968年名古屋場所で13勝2敗の成績で幕内初優勝を果たしました。大関昇進と初優勝時の景気局面は、どちらも、第6循環である、いざなぎ景気の拡張局面の真っただ中でした。 孫の大関・琴桜の大関昇進と初優勝はどちらも今年・2024年になりました。今年に入って内閣府の月例経済報告の景気判断は、「景気は、〇〇だが、緩やかに回復している」との判断が続いています。 たとえば、直近の10月の景気判断の但し書き付き部分は、「一部に足踏みが残るものの」というものでした。但し書きが添えられてはいるものの、景気の拡張局面であると思われます。祖父・孫とも大関昇進と初優勝は景気の拡張局面に当たります。 初代・琴桜は1972年九州場所で、14勝1敗で3度目の優勝、1973年1月場所も14勝1敗で連覇し、場所後に横綱に昇進しました。大相撲が年6場所制になったのは1958年で、その年の1月に横綱審議委員会の横綱推薦の内規が制定されました。 第1項:横綱に推薦する力士は品格、力量が抜群であること。 第2項: 大関で2場所連続優勝した力士を推薦することを原則 とする。 第3項: 第2項に準ずる好成績を挙げた力士 を推薦する場合は、出席委員の3分の2以上の決議を必要とする。 第4項:品格については、日本相撲協会の確認に基づき審議する。 というものです。初代・琴桜は大関在位32場所での横綱昇進で、昇進時の年齢32歳2ヵ月は、年6場所制における最高齢だったため、「遅咲きの桜」などといわれました。横綱昇進時の景気は第7循環の景気拡張局面でした。