《西武池袋本店》ついにヨドバシカメラ出店の犠牲者が…「孤独のグルメ」聖地の閉店、ファンが語った哀しみと切なる願い
手打ちの秘密はデパ地下にあった
ではなぜ、屋上の小さな売店で手打ちが可能なのか。その秘密はこのデパートの地下に行くとわかる。 デパ地下といえば、言わずとしれたお惣菜やスイーツが並ぶ食料品売場だが、その一角にもかるかやは存在するのだ。お土産用のうどんを売っているのだが、ここにうどんの打ち場があり、打ち立てのうどんが屋上で食べられる仕組みになっている。 作業場はガラス張りになっており、うどんを打っている様子がライブで堪能できる。年末にはうどんではなく年越し用のそばのみの販売となり、売り場から階段を上って長い行列ができる。 このそばも武蔵野うどんを彷彿とさせる、太くてゴワッとした食感のもので、東京のそばつゆよりも、甘辛い肉汁がよく似合う。毎年年越しそばはかるかやと我が家では決まっており、大晦日に行列に並ぶのが恒例行事となっていただけに、今年からはそれも叶わず、かるかやに近い蕎麦に今後巡り会えるのかと途方に暮れている。 この度閉店という経緯になったのは、この地下の売り場の問題が大きく起因しているらしい。
閉店は仕方ないけれど…
'22年11月、セブン&アイがアメリカの投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」に、そごう・西武の全株式を売却する契約を結んだ。翌年8月に西武池袋本店の売却が決まると、同月31日、従業員がストライキを起こし、ニュースにも大々的に取り上げられた。 フォートレスと組んでいるヨドバシカメラが池袋西武に入り、大規模な改装が行われるとの報道が出ると、ビックカメラの牙城である池袋にヨドバシカメラが来ることへの抵抗感、さらに1980年代以降の西武セゾン文化の象徴が池袋から消える危機感が噴出した。 当初噂されていたのは、1F以上のブランドスペースが大幅に削減されるという話だったため、地下の食料品売り場は影響を受けないと思っていた。しかし、かるかやは地下の店舗が閉店となることでうどんが打てなくなるため、屋上の店舗も閉めるということだそうだ。 つまり、地下食料品売り場にもヨドバシカメラの進出が影響してくるかもしれない。 個人的にはヨドバシカメラはビックカメラとともに昔からよく利用する家電量販店であり、池袋という地でいい意味での競争が生まれればいいと思っている。また西武セゾン文化も、現在の池袋西武が80年代ほど池袋に影響を及ぼしているのかといえば、お世辞にもそうとはいえない。 時代に合わせた池袋西武の改装が求められるだろうし、それがヨドバシカメラの進出によって叶うのかは知る由もないが、西武が新たな池袋の文化発信地となることを望むばかり。ただ、願わくば新生池袋西武でのかるかやの復活、それが無理なら駅そばでも何でもいい、西武グループのどこかで味わえる日が来ることを期待したい。
刈部 山本(ライター)