【解禁時間公開】 フェラーリ・ドーディチ・チリンドリに初試乗! これぞ歴史に残る”12気筒”
嗚呼、このためにルクセンブルクまで来たのか
だんだん緊張感も和らいできてクルマに慣れてくると、ドーディチ・チリンドリがとても扱いやすいクルマであることに気が付いた。正確には"そう思わせてくれる"と書くのが正しいだろう。830psのFRが扱いやすいなんて、ちょっと不思議な感覚だが、そんなハイスペックを"使わない"場面のマナーは実に紳士的だ。 後半は路面も乾いてきたので、ステアリングのマネッティーノをスポーツモードに変更。そして、うずうずと湧いてくる、V12サウンドへの渇望……。 ということで、周囲の様子を見ながらレッドゾーン手前まで引っ張ってみたところ、あのV12らしいレーシーなサウンドが轟きわたり、嗚呼、このためにルクセンブルクまで来たのかと感動! しかもそこに怖さやハードルはなく、これなら誰でも楽しめそうな気がしたのも、時代を感じさせる部分だ。 無事に3時間半のテストドライブを終え、昼食を挟んで、グッドイヤーの施設を見学。試乗会プログラム最後に設定されたサーキット走行では、もはやクルマの大きさを感じないくらい馴染んで、コースを気持ちよく駆け抜けることができたのだが、同乗走行では、その数段上のレベルでの"扱いやすさ"を体験することになる。……あんなに"踊る"フェラーリに乗ったのは初めてだ。 前日のプレゼン。ドーディチ・チリンドリを紹介する映像の中で、生前のエンツォ・フェラーリがこう話していた。 「12気筒はいつだってフェラーリのオリジナルカーだ。12気筒1500ccが誕生したのは1946年だから、それ以外はすべてオリジナルの派生モデルだと思ってほしい」 ヨーロッパの厳しい排出ガス規制の中で、自然吸気12気筒を作り続けることは、もう難しいかもしれない。だからこそ、派生モデルの集大成として作られた"フェラーリ12気筒"なのかもしれない。いや、人生を楽しむ天才であるイタリア人たちが、今を楽しむ最高の1台として、楽しんで開発したのかもしれない。 いずれにせよ、歴史に残る"12気筒"が誕生したことだけは確かだ。果たしてこれは歴史の終わりか、それとも新たな時代の始まりなのだろうか?
平井大介(執筆/編集)