映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』は爽快な気分になれるお仕事ムービー!
ハリウッド映画が好きなテーマのひとつ。それは“宇宙への夢”かもしれない。とくに何度も描かれるのは、人類初の月面着陸までの道のりとその後。『ライトスタッフ』や『アポロ13』、『ファースト・マン』など、これまでも傑作が生まれてきた。そこに新たに加わりそうなのが本作だ。 1969年、アポロ11号は月に到着。飛行士たちが月面に降り立った映像は、世界的なテレビの普及も重なり、50年以上経った今でも歴史的な一日と語り継がれる。その舞台裏を描くのだが、月面着陸の映像がじつはフェイク(作り物)だったかも……という都市伝説も取り入れ、二転三転のドラマになっている。映画ファンの中には、1977年公開の名作『カプリコン・1』を思い出す人もいるかも。火星着陸の成功をスタジオでの“やらせ”撮影ででっち上げる緊迫サスペンスだったが、本作はエンタテインメントとして楽しませる作りを優先。PRマーケティングのプロである主人公のケリーが、新たに頼まれたのはNASAの仕事。アポロ計画への予算を集め、人々の関心を高めるべく奮闘する彼女を中心に、人類の歴史を変えた一日までが描かれる。 最初から最後まで観る者を夢中にさせるのが、スカーレット・ヨハンソン。相手をその気にさせる弁術に長け、美貌も武器にするケリーが超ハマリ役なうえに、60年代のファッションやヘアが最高に似合っている! アポロ11号の発射責任者であるコールとのやりとりも絶妙で、彼とのロマンティックな見せ場も用意され、必要以上に心がときめくのが映画らしい。タイトルがスタンダードジャズの名曲であるように、要所での音楽の使われ方もエンタメの見本のよう。さらに主人公たちを囲む脇キャラにも適材適所に役割を担わせ、最後はチームプレーで感動させるあたりも心憎いばかり。“仕事には誠実に。そして自分には正直に”。そんなテーマが伝わってきて、爽快な気分で映画館を後にできるという意味で、この夏、オススメの一本かもしれない。 『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』7月19日公開 製作・出演/スカーレット・ヨハンソン 監督/グレッグ・バーランティ 脚本/ローズ・ギルロイ 出演/チャニング・テイタム、ジム・ラッシュ、アンナ・ガルシア 2024年/アメリカ/上映時間132分
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito