aiko「洗脳騒動」で露呈した“芸能人と恩人”のいびつな関係 業界人は「ミュージシャンは洗脳されやすい」
■カリスマミュージシャンも洗脳に これまでの裁判では、aikoが寄せる信頼を巧みに利用しながら、千葉被告は音楽制作だけでなく、ライブのセットやグッズに至るまで自分の管理下に置くことで背任行為に手を染めていた可能性が指摘されている。 そしてaikoが証言台で口にした「洗脳されていた」「支配下にあった」といった衝撃的な発言――。実は、これまでも芸能界や音楽業界では“洗脳騒動”がたびたび話題になってきた。スポーツ紙の芸能担当デスクはこう振り返る。 「近年では、人気女優が事務所独立時に演出家の女性から洗脳されているという一部報道が話題になりました。人気音楽ユニットの女性ボーカルも、かつて声の不調に悩まされていた時に出会った気功師夫婦に心酔し、作詞を一緒にしたり、信奉者たちが暮らすマンションに移り住んだりと、かなり入れ込んだ時期があったと報道されました。また、最終的に自己破産にまで至った『X JAPAN』のToshiさんの洗脳騒動は世間の大きな注目を集めました」 Toshiはロックオペラで共演し、後に結婚した元妻からの誘いでヒーリングアーティストを名乗る男性のセミナーに参加したのをキッカケにこの男性に傾倒。 セミナーでは、自分の生い立ちを語り、自らが負ってきた心の傷をさらすよう迫られ、“化け物アゴ男”などと罵倒されながらも信じ続けた。家族やバンドとも距離を置き、セミナーの広告塔ともなりCDを売りながら地方をまわる日々を送る中、10億円以上の私財をつぎ込んだ揚げ句、最終的には3億円近い負債を抱えて自己破産した。 これを機にようやくこの男性やセミナーとの決別を宣言し、14年には「洗脳 地獄の12年からの生還」(講談社)という手記で自ら洗脳騒動を総括した。
■心の隙を突かれて利用される 社会的に成功を収め、富や名誉も獲得したはずの人気芸能人たちが、なぜ特定の人物に“洗脳”されるような状態に陥ってしまうのか。 歌手やミュージシャンも所属する芸能事務所のマネジャーはこう明かす。 「芸能の仕事は特殊で相談できる人も少ないですし、不安定な部分も大きく、仕事現場で知り合う“同僚”の多くは突き詰めればライバルという状況です。いくら仲が良いと言っても、たわいもない話はできても、悩み事や深刻な話はしにくいでしょう。とくに歌手やアーティストは、フェスや音楽番組などで他のアーティストと仕事をともにすることもありますが、基本的には個々での活動がメインです。周りの人間関係も限定的になりがちなんです」 そのうえで、芸能人は人気が出るほど“ジレンマ”にさいなまれる実態があると明かす。 「売れっ子になればなるほど、スタッフなど周囲の人たちからは腫れ物扱いされますし、ほめられたり、おだてられたりすることはあっても、叱ってくれたり、忠告してくれたりする人はほとんどいない。歌手やアーティスト本人も、周囲を不安がらせるような弱音や愚痴は吐きづらいですし、細かいお金の話などもしにくい。それこそ、心を開ける相手といえば、下積み時代から身近にいるごく限られたスタッフか、それとは逆に、仕事とは縁遠く、利害関係のないプライベートで信頼感を抱いた人物などに限られます。そういう意味では、ミュージシャンは特定の人物への依存度が高く、“洗脳”されやすい環境にあるとも言えます。自分が弱っている時に、信頼している相手に心の隙を突かれ、利用されたりするケースは、程度の大小こそあれ、そこそこあると思いますよ」(前出の芸能事務所マネジャー) aikoは法廷で千葉被告に対して「ちゃんと心の底から反省してほしいです」と述べた。この言葉は、千葉被告の胸に届いたのだろうか。 (立花茂)
立花茂