窪塚洋介の役者論「カチンコの音でオンオフを切り替えるのが、ナチュラルで好きです」
WOWOWとハリウッドが共同制作するドラマ『TOKYO VICE』は、1990年代の東京を舞台に、初の外国人記者として新聞社に採用されたジェイクが、裏社会の闇を暴いていく物語。Season2で窪塚洋介さんが演じるのは、東京を牛耳る千原会の若頭で、出所してきたばかりの葉山。「今までの役者人生の中で一番と言っても過言ではない、とても難しい役柄でした」と語るそのわけとは? 【写真をもっと見る】溢れる色気……40代窪塚洋介が「今までの役者人生の中で一番と言っても過言ではない、とても難しい役柄でした」と語るそのわけとは?
――窪塚さん演じる葉山は二話で初登場。組員を前に復帰&若頭襲名の挨拶をする場面は、これまで観たことのない凄みがありました。 そう言っていただけると、ほっとします。僕はまだ完成した映像を二話までしか見られていなくて、まだちょっと腰が浮いているというか、そわそわしているんです。アンセル(・エルゴート/主人公・ジェイク役)や向こうのプロデューサーたちが褒めてくれるから、まあ大丈夫なんだろうなと思ってはいるんですけれど。 ――葉山は、どんな男だと思って演じていらっしゃいますか。 一言でいえば鬼畜。クソ野郎ですよね。どうすれば相手の尊厳を傷つけ貶められるか、自分のために利用できるかに、全神経を注いでいる。これまで演じた役柄の中で、もっとも僕自身と距離のある人物でした。ふだんの僕は、どうすれば相手が喜ぶかを常に考えているし、無遠慮に相手を傷つけてしまわないか、言葉選びにも慎重だし……。
――ジェイクと友情をはぐくむ佐藤(笠松将)には、思いやりを見せるなど人間味のある場面も多いですが、葉山は皆無ですもんね。 まあ、ヤクザの若頭ですからね。ヤクザに知り合いはいないけど、街でお見掛けするだけで、一般人とはオーラが違うのがわかるじゃないですか。目つきからして、もう違う。それを芝居で表現するというのは、なかなかの挑戦でした。役になりきればいい、って次元ではないんですよ。声をあえて低くしたのもそうだけど、どうしたって背伸びしなくちゃいけない部分は出てくるし。 ――いつもと、使っている声帯が全然違う、って印象でした。それが凄みにもなっていて。 菅田(俊)さんが演じる組長もそうですけど、人間の可聴領域をギリギリ外れるような声ですよね。もうね、迫力そのもの。谷田(歩)さんが演じる戸澤(千原会の敵対組織の組長)もそうだけど、本当に役者なのかなって疑いたくなるくらい、凄みがありました。Season1を観て、この人たちの中でやらなきゃいけないのか、とかなりのプレッシャーを背負いましたけど、対峙する興奮や楽しさのほうが上回っていたな。 ――違和感なく、溶け込んでいました。 なら、よかったです。もともと僕自身にも、突拍子もないことをやらかしそうだなあ、というイメージはあったと思うんですが、それをネガティブな方向に、ダークサイドに潜っていくことで滲み出させないといけなかったから。どこまで表現できているだろう、という不安はクランクアップする瞬間までつきまとっていました。この作品を経て、地声もちょっと低くなっちゃった気がする(笑)。