子育て世帯vs高齢者の「公園をめぐる対立」止めたい。杉並区“公園の新ルール”が話題を呼んだワケ
利用者たちが、利用しやすい公園に育てていく
――今後、公園事業で新しく取り組みたいことがあれば教えてください。 大場「『新しい公園のルール』は現在、試行段階です。採用ではなく試行としているのは、その先を見据えてのことです。新しいルールを通じて、公園がみなさんにとって居心地の良い場所になれば、自然と行きつけの公園ができますよね。すると、自分たちでもっと公園を快適にしようという思いも生まれるはずです。 現在も、掃除をしたりお花を植えたりとボランティアで活動してくださる方々はいます。利用者が自発的になることで、さらに利用しやすい公園に育てていくことができます。杉並区内にはおよそ350箇所の公園があるのですが、決められた職員ですべての公園をきめ細かく運営していくのは、現実的に限界があります。ですので、利用者にも入っていただいて、自分たちで使いやすい公共の場にしていただきたいです」
家庭や学校、職場とは異なる“第三の居場所”にも
――自分たちの手で快適な公園に育てていくというのはすてきな発想ですね。 大場「公園はさまざまな年代の方が集まる場所です。子育て世代とひと言で言っても、よちよち歩きの子を持つ保護者もいれば、小学生の子を持つ保護者もいます。 公園での交流の機会が増えれば、世代を超えたコミュニティもでき、家庭や学校、職場とは異なる居場所ができます。そうすれば、みなさんで新しい活動を行うこともできますよね。そのためのステップの一つとして、現在試行中である『新しい公園のルール』をまずは本採用することが大事かなと考えています」
公園をめぐる、子育て世帯と高齢者の“対立”にストップを
――利用者にとっても、活動の場所が増えていきますね。 大場「そのためにはいろんな手段があると思います。杉並区が今行っていることが正解というわけではないので、そこは試行錯誤しながらすすめていきたいです。 また、SNSで公園での禁止事項が話題になると、“高齢者が子どもにルールを強要しているという”ニュアンスで反応されることが多々あります。実際、新しい公園のルールを試行した際、私たちのところにも『高齢者ではなく、子どもの立場になって考えてくれてありがとう』というお声をたくさんいただきました。 こういった声はもちろん励みになりますが、ただ、今回私たちが新しい公園のルールで伝えたかったのは、高齢者よりも子どもを優先したという対立の話ではありません。そのことは、皆さんにご理解いただきたいです。 いずれ私たちも歳をとっていきます。生活や状況や環境が変わる中で、いろんな世代の方にとって憩いの場所になればと感じています。公園は『ちょっとした交流をもったら意外に楽しかった』『おじいちゃんと話したら、意外に盛り上がった』という、世代や状況を超えた交流ができる可能性を秘めた場所だと信じています」
他の自治体にとっても、ルールを見直すきっかけになれば
杉並区の新しい公園のルールは「作って終わり」ではなく、ルールをきっかけに利用者が公園を居心地の良い空間に育てていくことが最終目的だと知りました。利用者を縛るためのルールではなく、利用について考えるためのルールにしたい。そんな杉並区の思い、皆さんはどう感じたでしょうか。 現在は試行段階だという「新しい公園のルール」。他の自治体にとっても、ルールを見直すきっかけになればと、願わずにはいられません。 <取材・文/瀧戸詠未> 【瀧戸詠未】 大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。Twitter:@YlujuzJvzsLUwkB
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