しずるが語る、「歳を重ねて、自分たちの届けたい笑いも変わってきた」
――メトロンズの活動を始めて、芸人の仕事に影響はありましたか? 村上 コントもベースは芝居なので、演技の経験が増えたことで、見せ方のバリエーションは増えた気がします。こうしたらウケるんじゃないか、の選択肢が増えたのは、単純におもしろいです。うまくいっているかどうかは別として。 KAƵMA 僕は、芝居をやるようになってから、相手の話を聞くようになりました。今までも聞いていなかったわけじゃないんですけど、「このセリフはこういう意図で、こういう背景があって言ってるんだ」って考えるようになったというか。反射で受け答えしなくなったっていうんですかね。 村上 でも実際、舞台の経験を得たことがちゃんと表現に繋がっているかどうかはわかんないですね。自分はもちろん、相方の変化に気づく余裕も今はまだないかも。目の前のことや自分自身のことをこなしていくので精いっぱいというか(笑)。
――そんななか、3月23日には単独ライブ「『不自然な藍色』作・演出 村上純 vol.4」が開催されます。タイトルはどういうテーマでつけたのでしょうか? 村上 成功するのは不自然なことだ、って友達の働いている会社の社長が言っていたらしいんですよ。確かに、自然に生きていて成功する人なんていないよな、と思って心に残っていた。“今、世に存在しない”という意味での不自然な行為をしたり、不自然なものをつくったり、不自然な考えを提唱したりするから、人は新鮮に驚いて惹きつけられていくんだよなあ、と。だったら、世知辛い今の世の中で、自然に生きていたら悲しくてつらい気持ちにしかならないところを、不自然でもいいから笑ったりおもしろがったりできる場をつくれたらいいな、って。
――前編でKAƵMAさんが「笑うのは疲れること」と言っていましたけど、確かにお笑いってそもそも不自然なことなのかもしれませんね。 村上 あとは、これまでのライブもずっとタイトルを色で統一していたんで。僕は藍色やネイビーがいちばん好きで今日も着てますけど、これまで藍色をタイトルに使ったことがなかったから、じゃあそれでと。来てくれた人が、なんだか不自然な90分だったけどいい時間だったな、おもしろかったな、と笑ってくれたらうれしいです。ずいぶんカッコつけたタイトルになっちゃったから、ダサッて思う人もいるかもしれないけど、まあそれも含めていいかな、と。 KAƵMA 笑うのが不自然っていうのは確かにそうで、歳をとってくると、今まで笑えたことが笑えなくなったり、逆に何が面白いのかわからなかったことで笑えるようになったりするんですよね。年齢とともに、届けたい笑いも変わってきた。世の中の価値観もいろいろ変わってきてるけど、それ以前に、笑いってそもそも不安定なものなんですよ。全員にとって正しい笑いをやるのなんて無理だから、「この人に笑ってほしい」と思える相手をひとりでいいからつくるのが大事なのかもしれないなと思いますね。僕は作家のせきしろさんが笑ってくれるとすごく嬉しいから、全体にウケることを考えるより、せきしろさんに刺さることを考えたい。それが結果的に、広い笑いにもつながるかもしれないな、と。 村上 バランスも大事ですよね。僕は人に合わせるのが好きなタイプだから、求められていることに応えたいと思うんだけど、それだけじゃやっぱりつまらないから、ちょっとでいいからほかの人と違う要素を入れたい。それが観る人に必要とされていなかったとしても、それがなくちゃ僕がお笑いをやる意味はないよなあ、って。あまのじゃくなんです。