生涯健脚でマイ防災力アップを 大経大教授「いざというときの自信に」
生涯健脚シニアが増えれば地域の防災力高まる
若吉教授はスポーツ科学専攻。東日本大震災の被災地でボランティア活動に打ち込んだ。沿岸部で津波に見舞われた住民たちが、「あの家のおばあさんは、自力で歩けたので高台へ避難して助かった」などと振り返る貴重な証言に耳を傾けた。歩く力が生死を分かつこともある。被災者が直面した現実を、スポーツ科学者として重く受け止めた。 都市型大学である大経大の一員として、スポーツ科学を地域貢献にどのように生かすか。存在意義を問う設問を自らに課し、考案したのが防災ウォークだった。これまで市民の参加を募るウォークイベントは健康や観光をテーマにすることが多かったが、若吉教授はスポーツ科学を軸に、防災、ウォーク、地域貢献を結びつけた。 「健やかに生きる本来の長寿とは、いくつになっても自分の脚で歩いて移動できること。健脚が長寿の源泉。予期せぬ災害発生に対し、もとより支え合いの精神は大切ですが、自力で安全な場所へ避難できる人が増えれば、それだけ地域の防災力が高まる。市民1人ひとりが生涯健脚でマイ防災力をアップできる環境醸成をサポートしていきたい」(若吉教授) 大阪経済の下支えするのは、各地域でがんばる中小企業。若吉教授は「来年は中小企業の防災担当者と連携し、より実践的な防災ウォークの展開を」と長期的視点で臨む。
プロセスから学ぶ成果こそスポーツのだいご味
若き日の若吉さんは水球の選手で、ロス五輪にも出場。国際大会では泳力を生かした速攻で、強豪チームを苦しめた。厳しい競技生活で得たのは「しつこさ」だという。スポーツは勝者にスポットが当たりがちだが、若吉さんの視点はやや違う。 「勝者になれるのはごく一部。ほとんどの選手は負けるわけですが、練習や試合を通じて多くのことを体験できる。勝敗の行方という結果ではなく、プロセスから学べる成果こそがスポーツのだいご味です」 座右の銘は「知行合一」。スポーツ科学者として研究と実践の融合を目指す。これからは生涯健脚によるマイ防災力向上の推進という新たなライフワークにも、粘り強く取り組んでいくことになりそうだ。 防災ウォークは12月2日開催で3コースで合計1000人の参加者を募っている。参加費500円(未就学児は無料)。応募締め切りは今月17日まで。詳しくは大経大の公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)