【海外トピックス】マスタング マッハEにラリーバージョン登場。EVが浸透する一手になる?
ラリー競技の伝統を受け継ぐ
マッハEラリーは標準モデルより地上最低高を1インチ(2.54センチ)上げてグランドクリアランスを拡大。瞬時にダンパーの減衰力をコントロールする「マグネライド」を装備し、ヨーの発生量を大きくしてテールスライドしやすくしたドライブモード「ラリースポーツ」を設定することで、オフロード走行を楽しくしたチューニングを施しています。この辺りは、フォード フィエスタやフォーカスRSなどで世界ラリー選手権(WRC)で活躍した歴史をもつフォードの真骨頂で、ラリーファンやアウトドアスポーツの愛好者の心に刺さるモデルと言えそうです。 同社のプロモーションビデオでは、MTBクロスカントリーの全米女子チャンピオンを起用して、湖畔のカフェにマッハEラリーで全速力で向かい(途中からはMTBで)森の中を疾走するシーンを見せるなど、ワクワクさせる演出も怠りありません。また5月に行われたプレス向け試乗会は、深い森林と高山のあるワシントン州で実施され、ダートコースをドリフトしながら性能を楽しむメディアの様子が動画サイトなどに上がっています。 このように「EVか内燃機関車か」という視点ではなく、車によって可能になる豊かなライフスタイルを訴求したモデルが登場することは、EVの裾野を広げていくことになりそうです。
EV開発の手は緩めていない
フォードは、同ブランドの看板モデルであるマスタングやF-150ピックアップトラックにいち早くEVを設定した点で、GMやステランティスよりも大胆にEVシフトに取り組んできたと言えるかもしれません。昨年後半からEV販売のペースが減速したことを受けて、フォードはテネシー州に建設中のブルーオーバルシティ(※1)での次世代EVトラックの生産立ち上がりを2026年に遅らせ、ミシガン州に建設を開始したバッテリー工場の規模を縮小するなどEV投資のスピードを調整するとともに、ハイブリッド車を強化する計画を発表しています。これらはEV事業部門で今年50億ドルの赤字見込みという状況からみて当然の修正でしょう。※1:車載電池工場を含め114億ドルの巨費を投じるフォードのEV一貫生産拠点の呼称 こうした逆風下でも、フォードがマスタング マッハEのラリーモデルを開発して、このモデルの魅力を広げようとしているのは注目に値します。マッハEラリーは、フォードCEOのジム・ファーレイの「オフロードの空間で際立って見える車を迅速に開発してほしい」という要請を受けて約一年で開発されたといいます。マッハEのチーフエンジニアのドナ・ディクソン氏は、「EVにまだ戸惑っている人たちも、この車が草場やダートを走破する姿を見れば『こんなこともできるんだ』と魅力を感じるでしょう。EVはどんなライフスタイルにも適合できることを感じて貰えるはずです」と語っています(※2)。※2:米オートモティブニュースの記事による。 SUVやクロスオーバーが全盛の昨今の自動車マーケットですが、アウトドアのギアを積むSUVの荷室スペースは欲しいが、普段の街乗りにはボディの大きさや重心の高さ、車重が気になるという人もいます。そうしたドライバーには、アウディのオールロードクワトロやスバル アウトバックのような車高の高いステーションワゴンや、マッハEラリーのようなオフロードでも安心してアクセルが踏めるクロスオーバーが選択肢になりそうです。