「もう漁業できねぇな。終わりだ」…フォトルポ・能登大地震「地元民が慟哭する」生々しい港の破壊現場
「かつて輪島には300隻ほどの漁船がいた。これじゃ、もう漁業はできねぇな。これで終わりだで……」 「もう漁業できねぇな。終わりだで」…フォトルポ・能登地震「無残な漁船に」地元民の慟哭写真 石川県北部にある輪島市で釣り船など遊漁船の船長をしていた50代の男性Aさんは、市内の港を見ながら肩を落とす。港では打ち上げられ座礁した漁船が、ひっくり返り船底を見せるなど無残な姿をさらしていた――。 1年の始まりを祝う元旦に北陸地方を襲った能登地震。多くの漁港に致命的な打撃を与えたのが前代未聞の海底隆起だ。100km以上に及ぶ活断層が上下に動いたために地盤が急激に盛り上がった。国土地理院によると、最大4mで隆起し東京ドーム約94個分にあたる4.4k㎡の広大な範囲が海から陸に変わってしまったという。 もともとの海岸線が200mも遠のいた地域もある。平均的な地盤隆起の速度は一年間で1㎜ほど。それが地震直後のわずか4秒から5秒の間に、最大4mの隆起が起きたのだ。単純計算で4000年分の隆起が一気に起きたことになる。 ◆「魚を運ぶ手段がないんだ……」 『FRIDAY』記者が現地を訪れると、広大な地域で海が消える自然の猛威をまざまざと見せつけられた(関連画像参照)。 前出のAさんが嘆く。 「数年前、燃料の高騰で『これでは船を出せない』と国会前でデモ行進もやった。それをキッカケに100隻ほどが漁業を辞めたんだ。そこに今回の地震……。輪島の港の隆起は1~1.5mほどで、岸壁は崩れていてもなんとか船の乗り降りはできる。でも漁に出ても(市場で)競りはやっていないし、(魚を保管するための)氷を作る施設も壊れてしまった。(県庁所在地の)金沢や加賀の市場に、魚を運ぶ手段がないんだ……」 深刻な被害は漁港だけではない。内陸でも危険な状態が続いている。 記者がたずねた輪島市・市ノ瀬町では、地震による大規模な地滑りにより川がせき止められ、溢れ出た水が集落や田畑に流れ込み滝のようになっていた。川をせき止める「土砂ダム」が決壊すれば二次災害を招き、さらに甚大な被害を及ぼすことになるのだ。現地では国土交通省や自治体が中心となり、大型の土嚢を積み重ね土石流を防ぐ作業が急ピッチで進められていた。 輪島市内では、少なくとも10ヵ所で土砂ダムが確認されている。地震発生から間もなく1ヵ月……。地元民はいまだに日常を取り戻せず、不安な日々を過ごしている。
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