維新は「大惨敗」したのか 小選挙区当選者の比率上昇、「筋肉質」な党に
日本維新の会で30日、先の衆院選での議席減を背景に、執行部に対する責任論が浮上した。党の母体の地域政党「大阪維新の会」の草創期の牽引(けんいん)役と位置づけられる浅田均参院会長が、役員会で「負けたのに誰も責任を取らない」と発言し、馬場伸幸代表らに辞任を要求したのだ。ただ、令和3年の前回衆院選の結果と比較すると、小選挙区当選者の割合が20ポイント以上高まるなどの変化もあり、「大惨敗」(浅田氏)という評価には疑問符がつく。 【ひと目でわかる】衆院選 与野党の獲得議席 維新は今回の衆院選で38議席、前回選で41議席をそれぞれ獲得した。総数を比べると大差はないように見受けられるが、小選挙区当選者と比例代表復活当選者の比率に目を向けると、戦果の差が浮き彫りになる。 ■小選挙区当選者7人増、惜敗率も上昇 小選挙区当選者数は、前回はわずか16人(当選者数に占める割合39・0%)だったのに対し、今回は23人(60・5%)に増えた。当選者の6割以上が比例復活当選者で占められていた前回選後に比べ、党所属議員の構成が「筋肉質」になったといえる。 比例復活当選者の「質」にも変化がみられる。分かりやすい指標となるのが、当選者の票に対する他候補の票の比率「惜敗率」だ。 前回選の比例復活当選者25人のうち、惜敗率が70%台以上だったのは7人にとどまり、残る18人は60%台以下だった。40%台以下に限っても8人に上り、大半が小選挙区当選者に詰め寄れなかったことが分かる。 これに対し、今回は比例復活当選者15人のうち9人が70%台以上だった。 比例復活当選者が小選挙区勝利に近づく兆しもうかがえる。神奈川10区で2回連続で比例復活に甘んじた金村龍那(りゅうな)副幹事長は、前回選で66・39%だった惜敗率を89・09%に引き上げた。 維新は、将来的には単独で政権を担える勢力を獲得する目標を掲げている。馬場氏は30日の役員会で、党の地盤である関西以外の小選挙区で勝利した事例を紹介した上で、目標の達成に向けて「正しい方向に進みつつある」と強調した。 ■比例票は294万減
とはいえ、今回、比例代表の全国の得票数は前回から約294万票減少した。立憲民主党や国民民主党が大きく躍進しており、維新の失速を印象づけた。代表選実施を求める声は地方議員の間にも広がっており、浅田氏の発言は「大阪府議らの意向を踏まえたもの」(党幹部)との見方がもっぱらだ。維新は久々の本格的な党内政局に突入しようとしている。(松本学)