「訪日客バブルなき横浜」でホテル開業ラッシュ
東京の浅草や京都の祇園など日本が誇る観光地は現在、外国人でごった返している。 日本政府観光局が発表した「訪日外客統計」によれば、2024年1~10月に日本を訪れた外国人は3000万人を突破した。過去最高はコロナ禍前の2019年に記録した3188万人。この数字を上回るのはほぼ確実だ。 【表でみる】近年の横浜はホテル開業ラッシュ だがこうしたインバウンド(訪日客)の恩恵を受けている地域は、東京都、京都府、大阪府といった一部に限られている。外国人の延べ宿泊者数(宿泊者×宿泊数)を都道府県別に見ると、東京・京都・大阪で63%を占める。北海道、福岡、沖縄まで入れると77%になる。
日本人にとってなじみがあっても、インバウンドの波に乗れていない観光地は少なくない。実は横浜もその1つだ。 ■東京と比べて宿泊ニーズが弱い 横浜といえば、横浜ランドマークタワーの建つ「みなとみらい地区」に加え、中華街や山下公園、外国人墓地など異国情緒あふれる街並みが有名だ。 だが、「中華街やレンガ造りを基調とする欧米風の街並みは海外にもある。日本を感じたいインバウンドレジャー客にとって、東京から日帰りできる横浜に宿泊するニーズは弱い」。立教大学観光学部の沢柳知彦特任教授はそう指摘する。
沢柳氏の指摘は、ホテルの客室単価に如実に表れている。大手宿泊予約サイトで横浜と東京にある同じブランドのホテルの客室単価を見てみよう。 大手ホテルチェーンのハイアットで比較した。1月に素泊まりで「ハイアットリージェンシー横浜」(横浜市中区山下町)に1泊すると2万円程度。それが「ハイアットリージェンシー東京」(新宿区西新宿)だと1泊あたり5万円と倍以上する。 客室面積は横浜が37平米、東京が28平米。客室の広い横浜のほうが宿泊価格は安い。ヒルトンやウェスティンホテルなどでも同じ現象が起きている。
国内系ホテルも横浜のホテルの割安さが目につく。 山下町に位置する「ホテルニューグランド」の客室単価は2万7500円程度だ。1927年の開業で、厨房からはプリン・ア・ラ・モードやシーフードドリアが生まれるなど横浜市屈指のクラシックホテルだ。内装やサービス品質を考えると、都内のホテルに比べてかなりお得といえる。 ■ホテル乱立の中で問われる戦略 その横浜が現在、空前のホテル開業ラッシュを迎えている。 コロナ禍以降、ハイアットリージェンシーやウェスティンホテル、ヒルトンが進出し、今後もコンラッドといった高級外資系ホテルが開業を控える。