故郷に錦、能登に元気 大相撲金沢場所、満員御礼
6日の大相撲金沢場所(北國新聞社主催)は、元日の能登半島地震後、石川で初めての地方巡業となり、郷土力士たちが復興へ向かう被災地に土俵からエールを届けた。会場には地震と豪雨で大きな被害を受けた奥能登から駆け付けたファンもおり、新大関として郷土に錦を飾った大の里や能登出身の遠藤と輝、炎鵬の4人は「元気になってもらえるよう頑張りたい」と、11月の九州場所でも全力で闘う姿勢を示した。 【写真】公開稽古で笑顔を見せる炎鵬 ●「新大関」4勝3敗、理事長「もっと稽古」 「新大関、大の里」。場内アナウンスが流れると、会場からは大きな拍手が沸き起こり、応援タオルが波打った。公開稽古で大の里は、同じ大関の2人と対戦。琴桜に1勝1敗、豊昇龍に3勝2敗とした。視察に訪れた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は馬力を評価した上で「もっとぶつかり稽古をしなきゃだめだ」と注文を付けた。 稽古を終えた大の里は、地元ファンの握手攻めにあい、花道からはサインを求める手が次々と伸びた。「能登から来たよ」と声を掛ける来場者もおり、大の里は「力にして次も頑張りたい」と語った。 「どんな雰囲気か心配したけど、皆さんが明るくて、逆に元気をもらえた」。地震、豪雨と相次ぐ災害に見舞われた故郷を気に掛けていた穴水町出身の遠藤は握手会などでファンと交流し、「前を向いて一緒に頑張っていけたらなと思う」と語った。 七尾市出身の輝は番外取組で「くせ者」翔猿を下して声援に応え、「パワーをもらったので、少しでも元気な姿を見せられるように頑張りたい」と意欲を口にした。脊髄損傷の大けがから再起を目指す序二段の炎鵬(金沢市出身)は「相撲を通じ、被災地に希望を与えたい」と話し、苦境から立ち上がる姿を見せる決意を示した。 祖父が珠洲市出身の小結大栄翔は「珠洲から来た人もいてうれしかった。能登との縁も深いので恩返しをしたい」と思いを寄せた。先場所で初めて幕下昇進し、勝ち越しを決めた豊雅将(白山市出身)は「疲れたけど、いい時間だった」と満足そうに語った。 地震で自宅が半壊した珠洲市大谷町の登谷(とや)美保子さん(78)は、避難先の金沢市内から観戦に訪れ、「心が沈んでばかりだったので、楽しいひとときを過ごしたかった」と感慨もひとしおだった。 ●すごい、強い、大きい 郷土力士4人は公開稽古の後、そろって取材に応じた。最速で大関昇進を決めた大の里の印象を聞かれた遠藤は「すごい」、輝は「強い」、炎鵬は「大きい」と語り、大の里は照れくさそうに笑った。 ●地域の安全に一役 大の里、遠藤、輝、炎鵬の4人は石川県警から「一日暴力団排除対策官」に任命された。開場時にロビーでファンを出迎え、暴力団の排除や特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺の撲滅を呼び掛けるうちわを配った。