国民に負担を強いる「異次元の少子化対策」がバカげている本当の理由…カギは、生みたい女性の「コストとリスク」を減らすこと
少子化の原因は、一人親の貧困対策をしないからだ
政府が異次元の少子化対策をやっても、日本の少子化は止まらないだろう。 政府は公的医療保険の保険料を上げて「支援金制度(仮称)」を新設するというが、これがすこぶる評判が悪い。私は、あるべき少子化対策に国民の負担はそれほどいらないと考えていて、その理由をこれから説明していこう。 【一覧】入ると“損”する「私立大学」ランキング…コスパ最悪!「意外な名門大学」 前編「生んだら貧しくなる国で子どもが生まれるわけがない…! 重すぎる負担を女性に押し付ける日本と「異次元の少子化対策」が完全に見落としたこと」で見てきた通り、女性が、子どもを生み、育てることは、場合によっては約1億6000万円の「コスト」を強いる。また、シングルマザーとなって貧困に陥る「リスク」も極めて高い。 日本は子どもを増やしたいと思っているくせに、シングルマザーに膨大なコストとリスクを押し付けて、その対策をしようとはしないのである。 私は、これが少子化の原因だと考えており、あるべき対策を考えることが本稿の主題である。 しかし、シングルマザーの貧困率が下がれば、子どもが生まれる可能性があることも、近年のデータから見えてくる。
出生率と一人親世帯の貧困率の関係
OECD加盟国で1人当たり購買力平価GDPが3.5万ドル(2015年ドル)以上の国で、一人親世帯の相対的貧困率と合計特殊出生率の関係を見ると、下の図のように右下がりの傾向線がひける。 この傾向線のばらつきを大きくしているのはアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド(NZ)である。いずれも人口密度の低い移民大国であり、このことが出生率を引き上げているのだろう。 この3ヵ国を除くと、傾向線の式は出生率 = -0.0158×一人親世帯の相対的貧困率 + 1.9555(決定係数= 0.4616)となる。決定係数(この場合、貧困率がどのくらい出生率を説明しているかを表す係数。0から1の値を取り、1に近いほどよく説明している)から見て、貧困率がある程度出生率を説明していると言える。 この傾向線の式から、1人親世帯の相対的貧困率が10%ポイント下がると出生率が0.158上昇することになる。つまり、シングルマザーで貧困に陥る可能性が低くなれば、子どもは生まれるということだ。