山下数毅三段の竜王戦での活躍で話題となった、次点2回での昇段について解説!
プロ棋士(四段)になるには、基本的に半年周期で行われている奨励会三段リーグで2位以内に入らなくてはいけない。例外としてプロ公式戦でアマチュア、女流棋士が一定の成績を収めるとプロ編入試験を受けることができる。 【写真を見る】 今回、山下数毅三段の竜王戦での活躍で話題になった次点2回での昇段。先述した三段リーグ2位以内の昇段の他に、次点(3位)を2回取れば四段昇段できる規定がある。ただし、2位以内の昇段と違うのは順位戦に参加できないフリークラスからのスタートであることだ。フリークラスのスタートは一定の成績を収めれば順位戦に参加できるが、もし条件を満たせないまま10年が過ぎると引退になる、厳しい制度だ。 山下は第73回三段リーグで3位となり次点を獲得。その期か次の第74回三段リーグまでに上がっていれば中学生棋士だったが、惜しくも届かなかった。だが、この時の次点の権利により竜王戦に参加(三段が1名参加できるため、前期三段リーグで昇段者を除く最上位が出場)。次点は三段リーグの3位の他、出場したプロ公式戦で優秀な成績を収めた場合にも付く。これは第44期新人王戦で都成竜馬三段(当時)が奨励会員として初優勝したのを機に作られた規定で、他には竜王戦ランキング戦での優勝がある。細かいところでは進行中の三段リーグで降段点(4勝以下)を取らないことや、次点2回の昇段には1つは三段リーグによるものが必要である。 山下は今期の竜王戦ランキング戦6組で6連勝し、決勝進出により5組昇級が決定。これはプロ棋士以外では初の快挙だ。続く決勝は先述した通り、決勝トーナメント進出だけでなく、2個目の次点による四段昇段も懸かっていた。決勝の相手は王位リーグなどで大活躍した現役最年少棋士の藤本渚五段。18歳と15歳のフレッシュな対局は先輩の藤本が貫録を見せて、史上初の快挙はならなかった。だが、この若さでこれだけの活躍を見せた山下が三段リーグを抜けるのは時間の問題だろう。 歴代の三段リーグ次点2回の昇段棋士には、2023年の棋聖戦、王位戦で挑戦者になった佐々木大地七段も含まれている。他には順位戦で連続昇級を果たした古賀悠聖六段もおり、安定した成績が必要な次点2回は当然実力がないと届かないことを示している。なお、これまでの次点2回による昇段者はすべて三段リーグによるもので、プロ公式戦による次点を含んだ昇段は出ていない(都成は新人王を取った後に1位で昇段)。 特殊なケースとしては佐藤天彦九段の例がある。佐藤は第34回、第35回と連続して次点を取って四段昇段の権利を得たが、フリークラスでの昇段を見送って三段リーグで戦うことを選んだ。これまでに唯一昇段を選ばなかったケースで、この先も出てくる可能性は低いだろう。なお、佐藤は第39回で1位の昇段を決めている。 文=渡部壮大
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