井上尚弥、1Rのダウンの理由は…?「試合直前に大きく腕を回し」「眉間にも力が」現場カメラマンが見た.vsネリ《東京ドーム決戦》の異様
2024年、大型連休最終日の5月6日。東京ドームで行われた井上尚弥とルイス・ネリのスーパーバンタム級世界4団体統一タイトルマッチは、事前の評判に違わぬ白熱した試合だった。スペイン語で黒豹を意味する「パンテラ」の異名を持つ“悪童”ネリは、やはりこれまで井上尚弥が対戦してきたどの相手とも一味違った。 【衝撃写真】「ネリの顔が大変なことに…」井上尚弥のエグい右でネリの顔面がゆがんだ決定的瞬間。「ネリがグシャリと崩れ落ちた」衝撃KOの連続写真も一気に見る(50枚超) “悪童”パンテラがモンスターに噛みつき、東京ドームに居た4万3000人が狼狽えた。 誰もが予想だにしない光景だった。あの井上尚弥が、1Rにキャンバスを転がったのだ。 これまでの井上の対戦相手は、高い事前評判と序盤戦の出会い頭で井上のパンチ力とスピードに驚き守勢を強いられてきた。しかし、この悪童はそうではなかった。1Rの中盤に接近戦の離れ際に左フックを強振し、井上の顎に命中させて見せた。 井上は同じタイミングで、左アッパーの返しで右のストレートを狙っていた。まさにパンチを繰り出そうと腰を入れたとき、一瞬早くネリのパンチが着弾。下位置から変則的な軌道で繰り出された左フックをもろに食らった井上は、反時計回りに一回転した。ただ、ド派手な見た目とは裏腹に、井上の体重移動に沿ったベクトルだったため、さほどダメージは感じられなかった。
ダウンの瞬間は「何が起きたのか…」
モンスターのダウンシーンを後から振り返ると、こんな感じだ。 とはいえ、その瞬間は何が起こったのかわからなかったのが、現場での実感だ。この感覚は、ノニト・ドネアとの第一戦目に井上が右瞼をカットしたときも同じだった。接近戦での乱打戦における、死角のパンチで、どちらも左フック。大別すると、シチュエーションもアングルも、似ていたかもしれない。 あのときは、写真を撮りながらカットした様子を見て「バッティングか?」と考えた。モンスターが、カットするほどのパンチをくらうとは思えなかったからだ。この日も同じで、レンズ越しに「スリップか?」と直後は混乱した。あの井上尚弥が、まさかネリのパンチをもろにもらって、その上ダウンするとは……。会場の空気も一瞬凍りついたように思う。 観客の多くも、私と同じような感覚だったのではないだろうか。なにせ正確な状況を掴むには、東京ドームは大きすぎた。 東京ドームの演出は格別だった。選手入場時に火柱が上がり、轟音が鳴り響いた。 先に入場したのは、挑戦者のルイス・ネリ。ネリはメキシコの国旗を背に靡かせながら、リラックスした様子でリングに向かって行った。レンズ越しに、落ち着いた黒い目が見えた。 前日計量を500gアンダーでパスしたネリの体つきは、山中慎介との2戦目よりもか細く見えた。わざとなのかわからないが、ネリは計量時に衰弱した様子を見せることが、多いように思う。今回もそうで、減量失敗とも思えたほどだ。ポジティブに捉えればよく絞れていたが、ガリガリに痩せた上半身が気になった。 続いてドームに入ってきた井上尚弥は、いつになく力んでいるようだった。ここ数試合は入場曲にテレビドラマ『GOOD LUCK!! 』のメインテーマ「DEPARTURE」を使っていて、比較的リラックスした様子で歩いていた。この日は、布袋寅泰が生演奏する映画『新・仁義なき戦い。』の「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」を携えて舞台を進むと、頷きながら会場全体をゆっくりと見渡した。眉間には力が入っていて、過大な気合いがみて取れた。 東京ドームのボルテージは最高潮。いままで経験したことのないほどの熱気が、そこにはあった。
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