井上尚弥の次期防衛戦が突然白紙になった理由 異例の事態に大橋会長も「聞いたことがない」大困惑
プロボクシング世界4団体スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥(31)=大橋=が29日、横浜市内のジムで本格的な練習を再開した。9月に都内開催で計画していた次期防衛戦で、挑戦者と目されたIBF、WBO同級1位のサム・グッドマン(25)=オーストラリア=との指名試合が、相手の一方的な都合で事実上の白紙になっていることが判明。宙に浮いた次の対戦相手にWBO同級2位で、元IBF世界王者のTJ・ドヘニー(37)=アイルランド=が最有力候補に浮上した。 【写真】ネリ戦後にリング上で対面したサム・グッドマン 東京ドーム決戦から約3週間、尚弥が再始動だ。シャドーボクシング、サンドバッグ打ち、ミット打ちをそれぞれ2回ずつ。4万3000人観衆の前でルイス・ネリ(29)=メキシコ=を撃退したキレのあるパンチは変わっていなかった。「自分の感じていないところでストレスはあったと思うので、いったんフラットにして今日からスタートです」と気持ちの入った練習となった。 次戦の相手は未定だ。ドームでの試合後、リングに上がって次戦の対戦を確認し、指名試合になる可能性があったグッドマンが7月10日にノンタイトル戦を行うと発表。試合間隔の短さから王者陣営が計画していた9月に戦う可能性は低くなった。挑戦者側が対戦を拒む異例の事態に所属ジムの大橋秀行会長(59)は「聞いたことがない」と困惑。王者側が対戦拒否なら王座剥奪(はくだつ)となるが、今回はグッドマン側に落ち度があるだけに尚弥も「向こうが断っておいて(王座が)剥奪されることになったら納得がいかない」と言い放った。 指名試合で1位との防衛戦が期限内にできない場合、指名挑戦者は2位以下になるため、東京ドームでアンダーカードに出場した元IBF世界王者でWBO2位のドヘニーとの対戦が有力。WBA1位のムロジョン・アフマダリエフ(29)=ウズベキスタン=、元3階級制覇王者でWBO3位のジョンリール・カシメロ(35)=フィリピン=らも候補に挙がる。 1階級上のIBF世界フェザー級王者ルイスアルベルト・ロペス(30)=メキシコ=からは対戦ラブコールがあり、フェザー級に階級を上げるべきとの論調も噴出。これには尚弥も付き合いきれず、「自分とやりたいなら、そっちが階級を下げてこいと言いたい」とバッサリ。大橋会長も当面の3試合は階級を変えないと明言した。 尚弥自身は、次戦の対戦相手が誰になるかは問題視せず、「誰がきても強さを見せるという意味では変わらない」と言い切った。3試合を戦ったスーパーバンタム級で強さを示していく。(戸田 幸治) ◆指名試合 王者に対し一定期間の間に義務付けられる防衛戦。指名挑戦者はほとんどの場合は当該階級に2か月以上いる世界ランク1位の選手。王者は正当な理由なく指名試合を拒否すると、王座を剥奪される場合があるが、今回の尚弥のケースでは世界1位ランカーが期限内に試合ができないため、TJ・ドヘニーら、2位以下の世界ランカーに指名挑戦権が回ってくる。
報知新聞社