窪塚洋介の20歳息子“さすがの佇まい”。父と共通する才能が“本物”だといえるワケ
ドラマデビュー作でさえる映画的な人
その後は父からのアドバイスで、学校生活を大切にした。2021年、櫻井翔と広瀬すず共演作『ネメシス』(日本テレビ)第2話にゲスト登場し、演技の世界で生きることを決めている。おそらく筆者が候補者リストに窪塚の名前を見たのは、ちょうど直後くらい。売り出し中の時期だと思われる。 同作第2話では、オレオレ詐欺に加担する青年を演じた。まだ演技が安定してない身体をゆらゆら揺らしながらも、バイクの後ろに乗り込み、こちらを見つめる抜きのアップなど、ここぞという瞬間の演技がさえている。 こういう抜きのアップを見せられてしまうと、やっぱりこの人は映画的な人なんだよなと思ってしまう。そこへタイミングよく回ってきた映画出演第2作目が、名匠・塩田明彦監督作『麻希のいる世界』(2022年)だ。
映画俳優としてどんどん光る才能
『麻希のいる世界』の主人公・青野由希(新谷ゆづみ)が学校の自転車置き場で自転車を出している画面外。「青野」と呼ぶ声が聞こえ、声は徐々に近づく。画面下手からフレームインしてきた人物の背中。先ほどから「青野」と呼んでいる軽音部員・井波祐介(窪塚愛流)である。 ギターを背負った背中が写り続け、下手側に少し振り返る顔がとてもいい。これが窪塚の初登場場面。そのあと再び「青野」と後ろから叫びながら、前を走る由希を祐介が自転車で追いかける。由希が自転車をとめる。祐介も自転車を地面に置いて、今度は徒歩で並走しながら追いかける。 同じ追いかけでも、自転車と徒歩をうまく使い分ける塩田監督の演出によって、窪塚が映画俳優としてとんどん光ってくる。この栄光は誰にもとめられない。本物の才能だ。 由希が自転車を起こして走らせ、祐介がひとり取り残される。カメラが緩やかに後退していき、窪塚の全身が写る。いったい、何等身なんだというくらい脚が長い。映画俳優の佇まいはこうでなくちゃね。 映画で最高に光る才能なら、映画監督が演出するテレビドラマだとどうだろう。『恋い焦れ歌え』(2022年)の熊坂出監督がメインで演出する、高橋ひかる主演のドロドロ恋愛ドラマ『顔に泥を塗る』に出演する窪塚もすこぶるいい。