【ウクライナ敗北は恐怖の始まり】21世紀型の戦い方を習得したロシアが晒す欧州への脅威
欧州はすでにロシアに備える時
ウクライナ戦争は、ウクライナの負けと決まった訳ではないが、このまま推移すれば、ロシアを22年2月24日の線まで押し戻すというウクライナの半分ほどの勝利も覚束ない。仮に、ウクライナが負ける場合、何が起きるかを考えておくことは必要で有益である。その場合、欧州を支配するのは屈辱と恐怖であろう。 欧州は結束して行動した。ロシアの戦闘能力を削ぐべく累次の制裁によりロシアに懲罰を課し、ウクライナの自衛努力を助けるべく軍事的・財政的に多大の支援を提供している。けれども、欧州は、ウクライナの戦場で鍛えられ21世紀型の戦い方を習得したロシア軍の脅威に向き合うことになる。 仮に、ロシアとの和平合意に持ち込めたとしても、それは幻想の安全を提供するに過ぎず、欧州はロシアがNATO領域、特に、バルト三国など東部領域に次なる侵略を企てる脅威への対処を迫られるであろう。加えて、核を含む米国の拡大抑止の信頼性が、ドナルド・トランプの言動によって揺らいでおり、それが欧州の不安を煽っている。 重要なことは、ウクライナの命運がこの先どう決するかにかかわらず、欧州が防衛努力を各段に強化し、ロシアに備えることであり、7月のワシントンにおけるNATO首脳会議はそのための重要な機会となろう。
ロシアは軍事能力を高めている。ロシアの軍事予算の国内総生産(GDP)比は本年6%に達すると見込まれている。ロシアの軍事産業は拡大しつつある。 NATOはこれに対抗し、抑止と防衛の能力を強化せねばならない。国防費のGDP比目標を現行の2%から2.5%に引き上げることも意義があろう。より重要なことは、ウクライナ戦争においてドローン(情報収集・偵察および自爆型の攻撃)、低軌道衛星(通信・目標設定・情報収集・監視)、AI、水中ドローン、電子戦等により具現化したハイテクによる戦闘の革命的な進化をNATOの作戦計画に組み込むことであろう。