いつ遊ぶ?賛否両論の狭間にある『Starfield』… 待望のDLC「Shattered Space」が発売された今、ベセスダの大作を再評価する【コラム】
筆者はベセスダ・ソフトワークスの大ファンで、どれほど小さなものであろうと『Starfield』のアップデート配信をいついつまでも待っています。ユーザーコミュニティの間で不評を買っていたマップ周りの要素はきちんとアップデートで実装され、ファストトラベルも街中で行えるようになったのは大きいですし、更に星の地表を行くビークルも追加。そして待望のダウンロードコンテンツ第1弾『Shattered Space』が2024年10月1日にリリースされました。『Starfield』ローンチからおよそ丸一年かけての登場ということで、筆者も期待していました。 【画像全9枚】 本記事ではそんな『Starfield』を再評価すべく、同作品の“今”にフォーカスしていきます。 『Starfield』に寄せられた批判とは 前提として、筆者は本作を評価しています。その反面で「評価しない」というプレイヤーの声も充分に理解できます。『Starfield』の宇宙にはアイデンティティのない空間が広がっていて、広大な空間として表現しきれてはいません。それは「宇宙での移動」が宇宙船を実際に乗り回して進むという仕様ではなく、ただワープで進行していくことが理由のひとつとして挙げられます。 さらには人が入植している星も充分な人口とは言えず「宇宙」というスケールに見合っていません。そういった事実と“ベセスダゲー”ということでユーザーからのハードルがむやみに上がっていたことが、賛否両論を生んでいる側面だと推測します。 批判点がある一方、遊べる側面も充分あります。本作から受けた印象として「虚無」という言葉を使うシーンも見受けられますが、それは飽きが早かっただけのことで、遊べたことは確かなのではないでしょうか。いや、ひょっとしたら底の浅い部分が気になって飽きた方も大勢いるかもしれません。しかしそれでも筆者は「クエストの物量の凄まじさ」「星に入植するかのようなハウジング」「様々な銃器」といった要素に心を掴まれました。はっきり言って、本記事の筆者は“偏っていること”を自覚するほどに『Starfield』に情熱をかけています。 Modは救済措置になるか リリースから1年以上を迎えたということでModシーンも賑わっており、「Star Wars Genesis - Total Conversion Modlist(Starfield Mod データベースより)」という無数にある“Star Wars Mod”をひとつにまとめたものがリリースされています。これは様々な競合を排除してテストプレイを重ね、その上で厳選したModを集約したパッケージです。収録Mod数はなんと合計200以上、ファイルサイズも約50GBを誇ります。 また、小規模なModとしては「グラブジャンプ」のローディング画面を非表示した上で異なる画面効果に差し替える「Seamless Grav Jump」も注目に値します。没入感を削ぐと言われていた「グラブジャンプ」の演出を巧みに差し替えたModと言えるでしょう。 このように、本作でもベセスダゲーに欠かせない「Mod」は揃っており、バニラに残っている不満をModで「Not for me」から「Just for me」に塗り替えられるのです。出来ることなら何の文句もなくバニラ状態で遊べたら……と思わずにはいられませんが、とは言えModコミュニティが盛んで、遊びの幅を広げられることはゲーマーにとってアドバンテージでしょう。また、ベセスダ・ソフトワークスは「Creation」という枠組みでユーザー向けにMod導入の手助けをしています。有料Modもちらほら見受けられますが無料のものも多いですし、PC版/家庭用ゲーム機版を問わず多くのプレイヤーが恩恵を受けられることでしょう。 『Starfield』を“いつ遊ぶ”のか DLC第1弾の『Shattered Space』の販売価格は3,199円であり、ゲーム本体である『Starfield』は9,680円で販売されています。筆者としては、この値段はゲーム内容に釣り合ってなく、値下げが待たれるというのが正直なところです。万人に勧められるようになるのはまだ先の話なのかもしれません。 アップデートで体験を変え、評価を上げた作品は『サイバーパンク2077』などに代表されます。その観点で言えば『Starfield』のアップデートは“1発1発の内容を濃いものにしようとしている努力が見える分、配信が遅い”という印象です。本作がきちんとした評価を得るためには、継続的なアップデートの配信と、コンテンツの拡充および仕様の変更が求められます。そのため、今よりも早いペースでアップデートを重ねてほしいところなのです。 遅々としたその配信ペースから、『Starfield』は「年単位で付き合う必要があるゲーム」と言えるでしょう。ダウンロードコンテンツがリリースされた節目であるとは言えど、素直に「今こそが遊ぶタイミングである」とは言えません。 DLC第1弾の『Shattered Space』の物語は、「ヴァルーン・カイ」という惑星での冒険、ヴァルーン家の故郷でもある星でいざこざに巻き込まれる……というのが、主な筋書きです。DLCで語られるストーリーにも悔やまれる点があり、ヴァルーン家に関係する存在が謎のままで終わっているところが片手落ちで惜しく感じます。そのうえ、人によってはボリューム的に“小粒”な印象を受けるかもしれません。しかし、そこに“新しい『Starfield』の冒険”があるというだけで筆者は喜んでプレイしていました。そのくらいの思い入れが本作にはあります。そう、この筆者は偏っています。 なにしろ本編だって遊び尽くす勢いでプレイしていたものですから、それを拡張してくれる「DLC」の存在は非常に嬉しかったのです。とはいえ、一部のプレイヤーにとっては「完璧なDLCではない」ということも確か。充分な出来ではないものの、有人星から離れた「ヴァルーン・カイ」のクエスト群は(一部を除いて)きちんと楽しく遊べるものでしたが、本DLCは『Starfield』ユニバースを拡張させる意図がありながら、広がりはさほど感じられず“狭い社会”を描くものなのです。ユーザーが望むモノや改善点を吸い上げた上での「次のDLC」に期待せざるを得ません。 そして、筆者のその思い入れの正体は、筆者がベセスダゲーにPCゲーム人生を変えられたことにあります。2006年にリリースされた『The Elder Scrolls IV: Oblivion』は衝撃的で、オープニングシーケンスの地下牢を抜けて外へ出たときに眼前に広がった世界には、心底魅了されたのです。全てのクエストをこなし、Modも大量に導入して遊びました。 また、『Fallout 3』がリリースされた際は、「あの『オブリ』を作った会社の新作!」という興味でプレイして、これまた打ちのめされました。筆者目線では、いわゆる「有志翻訳Mod」のドアを生まれて初めて叩いたタイトルでもあります。その有志翻訳には、のちに自分自身で参加して活動していたほどです。 そんな思い入れがあるベセスダの25年ぶりの新作……手を出さない理由がありません。ローンチ直後はあまり良い印象を抱いていなかったのは確かです。とはいえ、それらを吹き飛ばすほどの物量の数々、幾重にも派生していくあまりに多いクエスト群、宇宙船の改造、拠点の改良、不満点を消すアップデートなどなどは、筆者を魅了してくれました。先に述べたModコミュニティもリリースの頻度が高く、小さな不満を払拭してくれるほどに楽しませてくれます。そう言った捉え方も自覚した上で、筆者は偏っています。 これで筆者の偏りの片鱗が見えたでしょうか。ベセスダがどこに向かおうとしているのか、プレイヤーをどう導いていくのか。その行く末を自分は見守るつもりで『Starfield』に挑んでいます。こんなものじゃないだろう、もっともっと遠くに連れて行ってくれるだろう、そういった思いが片時も離れません。「Creation」Modでもいい、もっとクエストを増やしてくれ楽しめるクエストを。武器の種類だってまだまだ不充分だ、今導入している銃器追加Modを外させてくれ、そんな心持ちでいます。 結びに ベセスダ・ソフトワークスの25年ぶり新作となる本作は「宇宙を舞台にしたSF」を題材に選びました。ただマップを歩いているだけで発生していくクエストの多さなどは、本作の誇る「物量」の顕著な例です。ベセスダ・ソフトワークスの今までの10年を振り返っても、この物量は達成できていませんでした。 しかし相変わらずの「ジャンク品」の量や、レジェンダリーアイテムといった要素など、別作品からの流用も目立ちます。よって、『Starfield』がベセスダ・ソフトワークスにとって革新的タイトルである」と言うには疑問が残ります。総じて「いつものベセスダ」と言われかねないタイトルです。 それでも、本作を通底する「多元宇宙に対するアプローチ」はゲームならではの手法として評価できます。その一方で、大方のクエストを片付けてプレイを進めても「あとは荒野しか残っていないのではないか……」と、寂寞とした感傷に襲われてしまいました。だからこそ、継続的なアップデートとModとDLCによる補完が待たれるのです。DLCは……そう、望むなら宇宙のように飛びきりスケールの大きなもので。ゲームの仕様をあらためるもので。 私は今もこれからも期待するのをやめません。どうか本稿を読んでいる読者のみなさまにもこの情熱が伝われば幸いです。今はまだ買いじゃないかもしれない、だけど将来性はあるはずです。それは数々のアップデートやベースゲームの作り込みが示唆しています。
Game*Spark SHINJI-coo-K(池田伸次)