松本幸四郎「いわゆるザ・歌舞伎」と自信のアピール、“伝説”『裏表太閤記』43年ぶりの再演
令和6年7月歌舞伎座公演「七月大歌舞伎」夜の部で上演される『裏表太閤記(うらおもてたいこうき)』に出演する松本幸四郎、市川染五郎が6月10日、都内で取材に応じた。“伝説”の異名を持つ同作の再演に際し、幸四郎は「古典歌舞伎の演出を堂々と使った、いわゆるザ・歌舞伎。きっと、お客様に興奮していただけるはず」と自信たっぷりにアピールした。 【全ての写真】『裏表太閤記』扮装スチール 昭和56(1981)年に初演された『裏表太閤記』は、二世市川猿翁(当時:三代目猿之助)が手がけた作品。二世猿翁とともに多くの作品を創り出した奈河彰輔の脚本、二世藤間勘祖(六世勘十郎)の演出・振付で上演された。『太閤記』から天下人・豊臣秀吉の活躍が光る“表”の物語と、その輝かしい光の陰にある秀吉のライバル・明智光秀らの悲劇的な“裏”の物語を巧みに織り交ぜて構成。昼夜1日かけて上演された壮大な物語で、明治座での初演以来、これまで一度も再演されてこなかった。 今回、実に43年ぶりの上演となり、三代目猿之助の精神を受け継ぎながら、歌舞伎の魅力が凝縮された熱い舞台が繰り広げられることに。幸四郎は「驚きはありました」と本音を明かし、「(再演ではあるが)古典歌舞伎の演出を取り入れた“新作”歌舞伎で、これから古典を上演していく上でのモデルになる。猿翁のおじさまが初演された時のスケールと熱量を受け継いで、今の時代に、さらにすごい作品をつくり上げる」と闘志を燃やした。 幸四郎は、豊臣秀吉と鈴木喜多頭重成と孫悟空の三役を勤めることになっており、早替わり、本水の立ち回りといった古典ならではのケレン味あふれる演出にも挑む。孫悟空を演じる際には、宙乗りも行う予定だが、自身は高所恐怖症だといい「普段なら、歩道橋もダメ(笑)。でも、お仕事なのでいくらでも飛びます」と場を和ませた。忠誠心と裏切り、親子の絆といった重厚な語り口が見せ場だが、「孫悟空のシーンが彩りになれば。派手に、にぎやかに」と語った。 一方、染五郎は、鈴木孫市と宇喜多秀家の二役を勤めることになっており、鈴木喜多頭重成と鈴木孫市が親子という設定になっている点も見どころだ。「立ち回り、宙乗りなど、視覚的にも楽しんでいただけるはず。ストーリーも分かりやすいと思いますので、ぜひ、若い方に見ていただきたい」とアピールし、「(昼夜通しの)初演よりコンパクトになると思いますが、熱さはそのままに上演されると思うので、ついていけるよう勤めたい。熱さで暑さを吹き飛ばす1カ月にしたい」と意気込んだ。 なお、昼の部『星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん) 成田千本桜』では、市川團十郎が13役を演じる予定で、「13対3だと、野球ならコールドゲームですから、どう太刀打ちするのか(笑)。大変な挑戦ですね」と幸四郎は思わず苦笑い。それでも、「ぜひ、昼夜楽しんでもらえれば。本心を言えば、絶対にこっちが面白いと思います」とライバル心を燃やした。 取材・文・撮影:内田涼 <公演情報> 歌舞伎座「七月大歌舞伎」 【昼の部】11:00~ 通し狂言『星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん) 成田千本桜』 市川團十郎十三役早替り宙乗り相勤め申し候 【夜の部】16:30~ 『千成瓢薫風聚光(せんなりびょうたんはためくいさおし)裏表太閤記(うらおもてたいこうき)』 松本幸四郎宙乗り相勤め申し候 2024年7月1日(月)~7月24日(水) ※10日(水)・16日(火)休演 ※昼の部:9日(火)・19日(金)、夜の部:3日(水)は学校団体が来観 会場:東京・歌舞伎座