「今泣いてちゃダメだ……」惜別、苦悩、そしてリベンジ。“モナコの呪い”打ち破ったルクレールの母国GP制覇への道のり
決戦の前に”チートデイ”
多くのドライバーがそうするように、ルクレールも自宅で寝泊まりができたのも救いになったはず。少し異例の“最後の晩餐”もそうだろう。 「(土曜日の)夜は狂ったように食べたんだ」とルクレールは明かした。 「実際、家に帰るのが遅すぎて料理できなかったんだ。それで大好きなピザを注文した。レースに向けた準備としては、普段は向かないけど『精神的に少しプレッシャーが和らぐかもしれない』と思ってね。それでぐっすり眠ることができた」 「過去2回、このポジションにいた時の気持ちは分かっていた。もちろん、本当に優勝したかったから、少し緊張していた。でもヘルメットを被ってマシンに乗り込むと、もう何も感じなくなるんだ」 それでも、レースを終えるまで全ての感情を抑えることは不可能だったというルクレール。そうした感情でのレースは、父エルヴェを亡くした数日後に行なわれた2017年のF2バクー戦以来だったという。 「僕としては、未だ昨日のことみたいに覚えているから、精神的にマネジメントするのが難しかった」とルクレールは言う。 「でもドライビング中にこういうことが起こるのはキャリアの中でも2度目のことだ。父と共に過ごした全ての時間、今いる位置に僕を引き上げるために彼が払ってくれた全ての犠牲がフラッシュバックしたんだ」 しかしF2バクー戦で当時19歳だったルクレールは、完璧なレースを披露して優勝。天性のスピードに匹敵する鋼の心を見せつけた。 父、そして友人との惜別に挫けることはなかったルクレール。何年にもわたって苦悩しながらも生涯の夢を諦めず、生まれ育ったモンテカルロで今年ついにリベンジを果たした。
Filip Cleeren