《小学校の隣に高層タワマンを建築》渋谷区と大手デベロッパーが組んだ再開発事業にジーンズメイト創業者(79)が憤慨「大人が子どもの安全をないがしろに」
34階建てタワマンvs「パークコート渋谷」
「渋谷ホームズ」が34階建てになれば、当然、「パークコート渋谷」側の日当たりや眺望は悪化し、資産価値が大幅に下がることが考えられる。もちろん「パークコート渋谷」の住民である西脇氏もその被害を受けることになるが、彼が最も不安視しているのは、神南小学校の児童への影響だ。 東急不動産と清水建設による提案書の通りに再開発事業が進めば、小学校からわずか10メートル足らずの距離に高さ約140メートルの開放型バルコニーのタワマンが出現することになる。西脇氏が訴える。 「小学校への日当たりが悪くなるのに加えて、ビル側からの落下物や盗撮、風害などの危険性も考えられます。この前も横浜の商業施設で飛び降り自殺に巻き込まれた人が亡くなる事故があったでしょう? これは渋谷区がバックアップする再開発事業なんですから、大人が子どもの安全をないがしろにしては絶対いけません。子どもに明るい未来を差し出せる日本社会でなきゃ……」 これまでの人生は仕事に打ち込むばかりで、市民運動のようなこととは無縁だったという。 「再開発に抗うために、メディア対応をしたり、署名を集めています。ほかには渋谷区議会で実際どんなやり取りが行われているのか確認に行くこともありますが、あくまで“傍聴”という立場なので、区民が発言できる機会はほぼなく、そんな区政の在り方にも問題を感じています。 幸い自分には時間はあるし、年齢的にも何も怖くない立場ですからね(笑)。子どもたちの未来のために少しでも何か貢献できたらと思います。僕は諦めが悪いので、この運動はなんとしてでも続けますよ」
「目先の利益だけを追求している」
「しぶや区民の声を聞く会」の事務局長で不動産鑑定士である森口英晴氏も、西脇氏とともに再開発事業に反対している。森口氏は、「一般的なマンション紛争であれば、このたびのような反対運動はしません」と断言する。 「『渋谷ホームズ』が新築のタワマンに生まれ変わることに対して『パークコート渋谷』が僻んで文句を言っているように捉えている方もいるでしょうが、これは決して単なる“お金持ち同士のマンション紛争”ではありません。 私が立ち上がったのは、この再開発事業が、区とデベロッパーの癒着によって区民が不利益を被るような構図になっているからです。 神南小学校の一帯は大通りから奥まったところに位置しているため、区道が廃道になれば、あの辺りに大型の車両が入っていくことは難しくなるでしょう。それによって周辺施設の改修工事だけでなく、火災発生時の救助作業などにも影響が出るのではないかと危惧しています。 高齢者や体の不自由な方が区役所の正面口に車で乗り付けることもできなくなります。目先の利益だけを追求し、将来のことや万一のことを全く想定していない再開発事業ではないでしょうか」(森口氏) 今年9月、ついに一部の渋谷区民らが区道の廃道を差止めようと東京地裁に訴訟を提起した。 (後編へ続く)