『御舟と一村、珠玉の日本画』箱根・岡田美術館で 両者の代表作ほか近現代の日本画50点を展観
明治末期から昭和初期にかけて活躍した日本画家・速水御舟(はやみぎょしゅう)の没後90年を記念し、御舟とその御舟に尊崇の念を寄せていた画家のひとりである田中一村(いっそん)を中心とした日本画展が、12月15日(日)から2025年6月1日(日)まで、神奈川県・箱根の岡田美術館で開催される。 【全ての画像】大橋翠石《虎図屏風》ほか広報用画像(全8枚) 現在の東京都に生まれた速水御舟(1894-1935)は、14歳で日本画家の画塾に入り、17歳から数年にわたり、若手の研究会である紅児会と赤曜会で研鑽を積んだ。20歳で再興された日本美術院で高く評価され、院展を中心に様々な展覧会で活躍するも、40歳の若さで病没している。一方、現在の栃木県に生まれた田中一村(1908-1977)は、幼い頃から南画を描き、神童と誉れ高かったが、17歳で入学した東京美術学校を2カ月あまりで退学し、その後は独学で制作を続けた。画壇で認められないまま、50歳で奄美大島に移住してからは、亜熱帯の植物や鳥、魚などの珍しい題材を描いて独自の境地を開き、69歳で没している。 御舟の優れた作品と、絵画に対するその清廉で求道的な取り組みは、多くの画家の崇敬を集めたが、一村もそのひとり。同展では、御舟作品4件と一村作品7件が展観されるが、なかでも大きな見どころは、それぞれの代表作である館収蔵の御舟《木蓮(春園麗華) 》と一村《白花と赤翡翠(あかしょうびん)》が向かい合う形で展示されること。自然の姿を格調高く描き出した両作は、制作時の時代背景や環境、素材や技法などの違いを超えて、両画家がともに高い絵画の境地を目指していたことを実感させてくれるものだ。 また同展では、絵の具をはじめとした画材にともにこだわりをもっていたふたりの用いた素材に注目し、岩絵の具のほか、金や雲母、墨などにも目を配り、素材と表現の関係をひもといていく。ふたりの作品をより深く味わうためのヒントとなるに違いない。 ほかにも、同館のコレクションの主要な一群をなす近現代の日本画のうち、約30人の画家による計50件の優品も展観される。狩野芳崖から、横山大観、下村観山、菱田春草、川合玉堂、上村松園、鏑木清方、小林古径、奥村土牛、村上華岳、そして東山魁夷や加山又造まで、明治・大正・昭和の時代を代表する日本画家の名品で、100年あまりの時代を追う趣向だ。御舟・一村の競演とともに、豊かな日本画の世界をじっくりと堪能したい。 <開催概要> 特別展『御舟と一村、珠玉の日本画 ―明治から現代までの巨匠とその名作―』 会期:2024年12月15日(日)~2025年6月1日(日) 会場:岡田美術館