熊対策「大きく進展する」 指定管理鳥獣追加を評価 「議論欠かせない」の指摘も
「ハンターに任せきりの状況を変えて」
環境省が16日にヒグマとツキノワグマの「指定管理鳥獣」への追加を発表したことを受け、関係者からは熊被害防止に向けた対策が「大きく進展する」などと評価する声が上がった。一方、「指定されたから全て解決というわけではない」と、対策を実効性あるものとするための議論が欠かせないとする指摘もあった。 最大体重500キロといわれる大型獣のヒグマが生息する北海道。東北地方の知事らと共に指定管理鳥獣への指定を国に要請していた鈴木直道知事は、「迅速に対応いただき感謝する。指定により熊類への対策が大きく進展する」とのコメントを出した。農業被害などの抑制へ、道として国の支援も活用し、生息実態調査や熊と人の生活区域を分ける「ゾーニング」の導入など対策の充実・強化に取り組むとした。 獣害対策を担う狩猟者でつくる北海道猟友会の堀江篤会長は「指定されたのはいいが、これを機に体制を充実させないと効果は望めない」とくぎを刺した。出没時の関係者の行動手順をまとめた詳細なマニュアルを作るなど「ハンターに任せきりのような状況を変える必要がある」と訴える。
「早く支援メニューを示して」
熊による人身被害件数が2023年度62件と全国最多だった秋田県は、熊が「指定管理鳥獣」に追加されたことを受け、「県の独自予算では限りがある。今回、指定され新たに財源が確保でき、より効果的で大規模に捕獲が展開できる」(県自然保護課)と期待を寄せた。 同県では、昨年度に引き続き、本年度も熊の出没が目立っているだけに「具体的な交付内容が分からないと手を打てない。国には早く支援メニューを示してほしい」(同課)と、国に具体的で迅速な対応を求めている。 23年10月、自身が所有する鶏舎に熊3頭が立てこもり、比内地鶏約30羽が被害を受けた同県大館市の養鶏業、黒田洋介さん(47)は、この動きを歓迎する。 黒田さんは「山が近くにある農村地域であれば、そばに熊が生息している可能性が高い。人間と熊との共存を考える上で、ある程度、熊の個体数を管理しなければならない。そういう意味で今回の指定は意義がある」と話す。 環境省によると、23年度の熊による人身被害の件数は秋田、岩手、福島など19道府県で198件、被害者219人。うち死亡した人は北海道と岩手、富山、長野3県で計6人だった。 農水省のまとめでは22年度の熊による農作物の被害額は4億700万円で、野生鳥獣による被害の3・2%だった。
日本農業新聞