最新装備は自慢!? 実は当たり前の快適装備はないほうが賞賛の的説
最新のクルマに装備される、快適・安全・便利な機能の数々。あると嬉しい反面、時の流れとともに徐々に当たり前の装備となっていく。かつてエアコンやパワステがそうであったように……。だからこそ、快適装備が何もついていないクルマこそ永遠の存在なのだ!! 【画像ギャラリー】快適装備皆無の孤高の存在!!最新機能を備えないからこそ古くならないトヨタ 2000GT(16枚) ※本稿は2024年8月のものです 文:清水草一/写真:トヨタ、ベストカー編集部 ほか 初出:『ベストカー』2024年9月26日号
■最新快適装備は新しいうちは賞賛の的
50年ほど前、我が家(実家)に日産ローレルが納車された。ミッションは当時まだ珍しかったAT(3速トルコン)。坂道発進でも後ろに下がらず超快適!父の知り合いはみんな「凄いですね!」と驚愕した。 現在、ATは超絶当たり前の装備となり、誰もうらやましがらない。当たり前の装備は、ついていて当たり前なのだから。 現在、ついていて一番喜ばれる快適装備は、シートヒーターではないだろうか。まだ当たり前というほどではなく、冬場はダイレクトにありがたみが実感できる。夏はシートベンチレーターも女性に好評だ。 そのほか、「凄い!」と言ってもらえる装備は、メルセデスの最新のアンビエントライト(室内のLED調光)や、マッサージ機能つきシートくらいじゃないだろうか? 私のプジョー 508はマッサージ機能つき。これは「へえ~!」と言ってもらえる。レクサス LMの後席巨大モニターもビックリしてくれるだろう。 しかし、一般的な快適装備は、今や軽自動車にもだいたい全部ついていて、自慢のタネにはならない。 逆にいま自慢できるのは、快適装備が何もついていないクルマだ。 まずエアコン。これがついていないクルマには全員ビビる。なにしろ夏は命にかかわる。誰も乗りたがらないが、オーナーはエレベストに登る登山家のように尊敬される。 そのほか、パワステやパワーウィンドウがないのも「凄い!」という扱いだから、ヒーロー気分を味わえる。 考えてみれば、かのトヨタ 2000GTには、快適装備はなにもなかった。エアコン、パワステ、パワーウィンドウ、すべてついてない。だからこそ貴族なのだ。ノブレス・オブリージュ(高貴な義務)というヤツである。 逆に言うと、この3つさえついていれば、クルマはほぼ快適だ。そのほかの装備は、ないほうが「さすが!」「男っぽいですね!」とほめてもらえて、カーマニア冥利に尽きる。 いまカーマニアの心は、快適装備の少ない、古いクルマに向かっている。なぜかそのほうが、ヨロコビが大きいのである! カーマニアでないならば、たくさん快適装備がついているクルマのほうが、気持ちいいし安全だ。 でもアナタがカーマニアなら、あまり最新の快適装備を自慢する気にならないだろう。なぜって近い将来、当たり前のものになってしまうかもしれないから! 一方快適装備がついてないクルマは、永遠に自慢できるし、時が経つほど自慢度は高くなる。私もパワステのない愛車、フェラーリ 328をずっと大事にします!