【総選挙に影響か…】兵庫・斎藤知事に辞職申し入れも「推薦責任」の維新&自民が悩む「水面下の攻防」
涙ぐむ姿を見せたが……
兵庫県の斎藤元彦知事(46)の証人喚問が始まってから2週間、兵庫県を取り巻く状況は、嵐のように急変している。 【写真】自身の不甲斐なさからか…会見で初めて涙を見せた兵庫県・斎藤知事 8月30日の百条委員会で行われた証人尋問。知事は淡々と質疑に答え、時に「記憶にない」など曖昧な回答をおりまぜながら追及を躱(かわ)していった。 9月6日に2度目の証人出廷をした知事の表情は、いくぶん余裕があるように映った。だが、松本裕一委員が贈答品のリストを一つ一つ読み上げて受け取ったかどうか確認し、竹内英明委員が県の内部調査に協力した藤原正広弁護士が利害関係者であったかどうかを追及すると表情が曇り始めた。 片山安孝元副知事(64)に対して“付箋を投げつけた”という行為については証言が揺れた。「県の対応は法律的に問題ない」と繰り返しながら、「道義的責任が何かわからない」と迷走。贈答品についても「知事室にある」「公務で使用した」と反論していたが、自宅に持ち帰った食品についても質問が及んだ。 そして、この日の知事の発言や対応が、議会を大きく動かすことになる。知事への辞任を求める声が強まり、無所属を含む全ての会派、県議会議員86人全員が「即辞職」を求める事態に発展した。しかし、それでも知事は改めて辞職を否定した。 今回の辞職申し入れは、知事選で斎藤知事を推薦した自民党と維新の会も賛同したのだが、最大会派と第2会派である両党の行動には本音と建前が見え隠れする。 ◆「保身」を指摘する声 日本維新の会は、9月9日に知事に辞職と「出直し選挙」を求める方針を決定した。日本維新の会の共同代表を務める吉村洋文大阪府知事(49)も「県政が結果としてうまく進んでいない状況も考えれば、間違っているところは素直に認め、知事を辞職し、県民に問うべきではないかという話をした」と記者団の取材に答えている。 維新の会の急激な方針転換には、批判の声も小さくなかったが、そうせざるを得ない事情もあった。大阪維新の会所属の議員が嘆く。 「万博対応を遥かに超える批判にさらされています。夏は地域の祭りなどのイベントで支援者と顔を合わせる機会が多いため、それが顕著でした。解散・総選挙を見越して、議員間では『一刻も早く斎藤知事を切るべきだ』というストレートな意見も相次いだ」 自民党も“県政への信頼が大きく損なわれている”などとして9月12日に知事への辞職申し入れを行っている。各会派で9月19日に不信任決議案を提出する方向で調整しているという。しかし、ここに至るまでの“経緯”に「保身めいたものを感じる」という声もある。自民党兵庫県連の関係者がこう明かす。 「知事の最初の証人喚問が行われた6日以降、『自民党の追及が甘い』『百条委員会は個人の感想や意見を言う場所ではない』という厳しい意見が出たのです。それが、2回目の証人喚問での厳しい追及に繋がった面はある。今は維新の会が批判されているが、『自民にも推薦した責任がある』と風向きがいつ変わってもおかしくない。兵庫選出の国会議員は選挙を見越してか、この問題に関わることを避けています」 ◆「逃げ腰」への苦言も噴出 そんな状況に、ある自民党県議はこんな苦言を呈する。 「県に関する問題の意志決定は県議団に任せる、という雰囲気には強い違和感を覚える。県議団の中にも、『国会議員も説明責任があるからしっかり説明しろ』と申し立てた議員もいますが、結局、実現していない。不信任決議案が可決され、知事が議会の解散を選択した場合、県議も厳しい選挙を戦うことになる。みんな口には出さないが、覚悟が足りず、選挙を避けたい議員もいるわけです。それだけに国会議員団の無責任さには憤りを感じることもある」 仮に議会解散となれば、斎藤知事だけではなく、県議も含めて県民に信を問うことになる。県議全員や維新本部からの辞職要求もはねつけた知事の言動をみると、辞職より解散が濃厚だろう。もはやこの騒動は、知事の進退だけにとどまる問題ではなく、衆議院選挙に直結しかねない政局も絡み合っているのだ。 辞任の有無に関わらず、百条委員会は今後も続いていく。次回は10月24日に予定されており、争点となるのはこれまでも多くの質疑がなされた「亡くなった元局長が送付した告発文が、公益通報に当たるかどうか」だろう。百条委員の一人がこう話す。 「井ノ本知明・前総務部長の出廷が肝でしょう。懲戒処分を主導したとされる井ノ本氏の証言は、公益通報であったかの判断にも大きく影響する。ただ、井ノ本氏は9月5日にも元県民局長への懲戒処分を主導したとされる件で証人喚問されていましたが、心身の不調が回復しないこと、自身への殺害予告があったことなどを理由に欠席しています。今回もどうなるかわかりません。いずれにしろ、百条委員会での井ノ本氏の言動に注目が集まっています」 斎藤知事は不信任決議案が可決された場合の自身の進退について、「法律に従って、さまざまな選択肢の中からしっかり考えていきたい」と述べた。県民は、知事だけではなく、県議や政党に対しても「評価を下す」機会が訪れるかもしれない。
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