【根岸S回顧】昇級初戦で完勝のエンペラーワケア 一気のGⅠ戴冠なるか、距離延長の不安と可能性とは
流れに恵まれた馬、そうでなかった馬
前後半600mは35.8-35.8のイーブン。前半が遅く、基本は先行馬ペースだった。瞬発力を繰り出したエンペラーワケアは別格であり、2番手から2着に粘ったアームズレインは過信できない。1400mに距離が延び、すんなり外枠から流れに乗れた面は大きく、その分最後はエンペラーワケアに抵抗できなかった。1400mは少し長いようだ。流れや枠順に恵まれたもので、続けて1400mに出走するなら疑ってかかりたい。だが、的確なレース選択で好調な上村洋行厩舎だけに、次は適距離に戻してくるのではないか。重賞通用の力は示しており、1200mならオープンで勝利を重ねられるだろう。 3着サンライズフレイムは先行優位の舞台を意識して極力前につけられはしたものの、それでも先行勢には及ばなかった。もう少し流れが速くなれば、着順を上げられた可能性はある。兄ドライスタウトより良馬場のパワー勝負への強さを感じるだけに、今後も少し時計を要するダートで狙っていきたい。自在性も出てきており、まだ上を目指せる一頭だ。 4着のヘリオスはマイペースに持ち込んだ。現状の力は出せた印象で、JRAの重賞だとこのぐらいが精いっぱいではないか。恵まれた好走だったことは頭に入れておこう。 5着フルムは得意条件で自分の競馬をしただけに、今後の評価は分かれる。重賞だと周囲の手応えもよく、馬群をさばくのに手間取ってしまう。今回は抜け出す前に決着がついてしまった。オープン、重賞だとラスト400~200mで11.4に対応できるスピードが課題だろう。 3番人気タガノビューティーは13着。先行優位な馬場でスタート後手、後方からではどうにもできない。慢性的にゲート難を抱えており、人気を背負うと裏切るケースが目立ってくる。気楽な立場で一発を期待したいタイプで、買い時を待ちたい。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳