【ふくしま創生臨時支局・只見町】救急搬送で新潟県の市と10月1日協定 2026年秋国道開通 病院到着20分短縮
2026(令和8)年秋ごろの国道289号八十里越区間(延長20・8キロ)の開通を見据え、只見町は隣接する新潟県三条市と連携し、救急患者を同市の新潟県央基幹病院に搬送する体制づくりに乗り出す。10月1日に連携協定を結ぶ。全ての救急患者に対応する「ER救急」を進める病院に円滑に受け入れてもらい、町が病院の医師養成や確保の制度に資金を拠出する。福島県内の市町村が隣県の医師確保制度に財政支援するのは初。搬送時間が約20分短縮され、町民の命を守る体制の充実につなげる。 協定は町と三条市、病院が締結する。町民の救急搬送を受け入れてもらう代わりに、町が新潟県医師養成修学資金貸与制度の資金の一部を負担する。制度は新潟県と三条市などが設け、医学生に修学資金を貸し出す。医師免許取得後、新潟県が指定する医師不足地域の医療機関に9年間勤務すれば返還が全額免除される。 福島県によると、県内では、いわき市や県南地方などの県境で隣県の医療機関との救急患者受け入れで連携しているケースがあるが、財政支援の例はない。
町の人口は8月1日現在、3576人で高齢化率は49・1%。唯一の医療機関である朝日診療所の常勤医が30日で退職し、不在となる。八十里越区間開通で隣県の医療機関も搬送先として選択できるようにする。 朝日診療所の常勤医確保の見通しは現時点で立っていない。福島医大や県立南会津病院、柳津町国保診療所などから派遣される医師が、非常勤として平日の日中のみ交代で勤務する。夜間や休日は救急患者の受け入れができない。現在、町からの救急患者の主な搬送先は会津若松市内の病院となっている。町などによると、町から同市の病院までの搬送時間は約1時間35分。八十里越区間を通行して新潟県央基幹病院に搬送すれば約1時間15分で、約20分の短縮が見込まれる。 町内の会社役員菅家大和さん(47)は幼児を含む子ども3人を育てる。常勤医が不在となる状況に不安を感じており、「子どもが病気になった時、病院まで搬送される時間が短縮されれば安心だ」と期待する。