『LEGO ホライゾン アドベンチャー』レビュー。LEGOになっても『Horizon』らしさは健在。独自解釈の遊び心満載で、ファンならニヤニヤできるはず!
アクションRPGの『Horizon Zero Dawn』(『ホライゾン ゼロ ドーン』)と、LEGOがコラボした『LEGO ホライゾン アドベンチャー』が、2024年11月14日、15日にリリースされる。対応ハードは、プレイステーション5、Nintendo Switch、PCで、PC版は2024年11月15日発売予定。Nintendo Switchのパッケージ版は、スパイク・チュンソフトより発売。 【記事の画像(23枚)を見る】 本作は、2017年に登場した『Horizon Zero Dawn』をベースに、LEGO ブロックでできた世界で、狩人アーロイの新たな冒険を描いた見下ろし型のアクションゲーム。オリジナル版と同じく、アーロイは出生のヒミツを解き明かすために、頼れる仲間たちの協力を得ながら壮大な冒険をくり広げていく。 今回ソニー・インタラクティブエンタテインメントより、プレイ用のコード(プレイステーション5版)を受領することができたので、記事担当ライターのジャイアント黒田によるプレイレビューをお届けする。なお、筆者は『Horizon Zero Dawn』と続編『Horizon Forbidden West』をクリアーしているが、恥ずかしながらLEGOのゲームをプレイするのは本作が初めて。 作品のメインターゲットは、LEGOファンと『Horizon』ファンだと思うが、本稿では後者の視点で作品の魅力を紹介したいと思う。また、ストーリーのネタバレには十分配慮しているものの、キャラクターの魅力を語るうえで関連したエピソードに触れているので、その点はご容赦いただきたい。 “LEGOらしさ”がプラスされてアーロイたちがますます魅力的に! 序盤の内容をもとにした先行レビューでは、「LEGOのアーロイはサンドイッチに目がない女の子!」と紹介したが、ほかの仲間になるキャラクターたちも、LEGOならではの味付けがされていてじつにユニークだ。 大好きな古の世界のコミックに出てくるヒーローに憧れるヴァール。ノラ族の大長老ながら、元気いっぱいで爆弾を投げまくるティルサ。ドーナツと呼ばれる古の世界のお菓子が大好物のエレンド……。「あれ、そんなキャラだったっけ?」と思ったのは、筆者だけではないハズだ。 このように、ストーリーは『Horizon Zero Dawn』をベースにしていながらも、LEGO作品らしくコミカルにアレンジされており、ギャグシーンやメタ的な発言が満載。本来なら違和感を覚えるハズなのに、そう感じさせないのは、「そんな一面があってもおかしくない……かも。いや、むしろおもしろい!」と思わせてくれたから。 たとえば、アーロイがサンドイッチに目がないという本作独自の設定。オリジナル版は、大厄災で人類文明が崩壊してから、およそ1000年後の世界を舞台にしているだけあって、サンドイッチなんてものは登場しなかったと記憶している。本作もオリジナル版と同じく人類文明が崩壊した世界を舞台にしているので、本来ならサンドイッチなんてものはないはず……なのだが、ホットドッグやドーナツまで出てくる。 これがマジメなノリの作品なら、疑問を抱いて「いやいや、おかしい!」とツッコミたくなるというもの。しかし、本作は作品全体のノリが軽く、独自の設定がキャラクターのイメージからかけ離れていないので、「アーロイぐらいの年ごろならサンドイッチは好きだよな」と、妙に納得してしまう(ツッコミどころが多すぎて、ツッコミが間に合わないともいえるが……)。 オリジナル版で、アーロイとともに冒険をくり広げたヴァールやエレンドはともかく、ティルサがプレイアブルキャラクターとして登場したのも、いい意味で驚いた。しかも、ティルサの武器は爆弾。さすがに、ティルサに爆弾のイメージはなかったが、爆弾を手当たり次第に投げまくる姿は、オリジナル版とのギャップが大きくて個人的にはツボだった。 ギャップの大きさでいえば、謎の男・サイレンスと、カルトを率いるヘリスも必見だ。ティルサもそうだが、オリジナル版で威厳のあるキャラクターほど、コミカルなストーリーが展開される本作に登場したときのギャップが大きい。これが決してイヤなわけではなくて、「こんな一面があったと思うと、ますます好きになれたかも」と感じさせてくれるような、絶妙なキャラ付けになっていると感じた。 本作には、自称・“DJサイレンス”として登場。アーロイを導く役割は同じだが、ミステリアスなキャラクターというよりも、陽気なイメージがかなり強め。 ヘリスは、本作でもカルトの親玉。趣味は日光浴であまり悪役のボスっぽくない。 さらに、アーロイを高垣彩陽さん、ロストを立木文彦さんといったように、オリジナル版と同じキャストが熱演しているのも、違和感を覚えなかった大きな要因だ。ストーリーに関しては、オリジナル版をプレイしてるファンなら、キャラクターの新たな一面を知ることができて、筆者のように堪能できるだろう。 個性豊かなアクションがレア武器とガジェットでますますパワーアップ バトルでも、『Horizon』らしさが楽しめる作りになっている。そもそも『Horizon』シリーズは、荒廃した文明と雄大な自然が融合した美しい世界を、広大なオープンワールドで表現していた。本作は、そんな『Horizon』の美しい世界をLEGOのブロックで再現。生態系の頂点に君臨する機械獣もLEGOのブロックで表現されており、シリーズファンも新鮮な気持ちで冒険できる。 本作は、拠点となる村で“冒険”(ストーリーを進めるためのメインクエストのようなもの)を選ぶと、フィールドに移動できる。フィールドでは、機械獣や敵対するカルトの兵士たちがアーロイたちの行く手を阻む。多彩なアクションを駆使して敵を倒しながらフィールドを進み、ゴールドブロックを入手すると、冒険をクリアーしてストーリーが進む、といった流れだ。 バトルを行うフィールドには、敵から身を隠せる草むらや投げると爆発するタルなど、オリジナル版でもお馴染みの要素が用意されており、本作でもバトルで利用できる。さらに、特殊な機器“フォーカス”も登場。このフォーカスを使うと、周囲に配置された利用可能なものを見つけられるほか、機械獣の弱点を表示できる。 その名の通り、機械の体を持つ機械獣は非常にタフ。簡単には倒せないが、弱点を攻撃すると大ダメージを与えられる。オリジナル版と同じく、バトルではフォーカスを使用してから攻撃を仕掛けるのがセオリーとなるだろう。 フォーカスを使用すると、機械獣の弱点やフィールドの利用できるものがハイライトされて表示される。 そのうえで、キャラクターごとに異なるアクションが体験できるのは本作独自の魅力だ。プレイヤーが操作できるキャラクターは、アーロイ、ロスト、ヴァール、ティルサ、エレンドの5人。アーロイとロストは弓、ヴァールは槍を使って戦うが、槍も投擲して攻撃する武器なので、3人とも操作感覚はほぼ同じ。ただし、槍には敵を貫通する効果があり、槍の射線上に複数の敵を捉えれば、まとめてダメージを与えられるといった特徴がある。 爆弾を投げて戦うティルサは、□ボタンを押しているあいだに射線が表示され、しっかり狙いを定めて爆弾を投げられるところはアーロイたちと似ている。ただし、攻撃が真っ直ぐ飛んでく弓や槍に対して、爆弾は放物線状に飛ぶという違いがあり、攻撃範囲が広いという強みがある。 敵が密集しているところに爆弾を投げればまとめてダメージを与えられるが、爆弾は弓よりも攻撃速度が遅く、敵に近づかれたときにとっさに攻撃しにくいという欠点も。ティルサは、アーロイたちと比べて玄人向けのキャラクターだと感じたが、破壊力のある爆弾は、使いこなせたときの爽快感は格別だった。 ほかのキャラクターと大きく異なる立ち回りが楽しめたのは、ハンマーで戦うエレンドだ。ヴァールのようにハンマーを投げるのかと思いきや、エレンドは近接攻撃が得意なパワーファイター。ハンマーを振り回し、周囲の敵に大ダメージを与えられる。離れた敵への対応策もちゃんと用意されており、□ボタンを長押しすることでダッシュ攻撃をくり出すことも可能だ。 敵の近くで戦うぶん攻撃を回避しにくいのは難点だが、瞬間的に与えられるダメージ量は、プレイアブルキャラクターの中でもピカイチ。敵の行動パターンを把握して攻撃をうまく避けられるようになると、ハンマーによる連続攻撃で大ダメージを叩きだすことができて痛快だった。ハンマーによる攻撃は、見た目以上に攻撃範囲が広く、複数の敵を一網打尽にしやすいのもうれしい。 キャラクターのアクションが、宝箱などから入手できるバラエティー豊かなレア武器で強化されるのもおもしろい。先行レビューではアーロイとヴァールのレア武器を紹介しているので、本稿ではティルサとエレンドのお気に入りを取り上げたい。 ティルサのレア武器の中には、爆弾が動物型に変化するものがある。それらの中でもお世話になったのは、機械仕掛けのサメが敵めがけて突っ込むシャークボムと、作り物のアヒルちゃんが敵に近づいて爆発するダックボムだ。シャークボムは射線が直線なので当てやすく、高火力なのが頼りになる。ダックボムは火力こそ低いものの、敵に反応すると自動的に近づくので、罠のように使えるのが魅力的だった。 ティルサのレア武器・シャークボム。敵に突っ込んでいく姿は魚雷みたい。 レア武器のダックボムは、キュートな見た目に反して敵を強襲する能力が凶悪。 エレンドのレア武器では、彼のパワーを底上げしやすい地ひびきハンマーが痛快だった。このレア武器を装備して□ボタンを長押しすると、ダッシュ攻撃が地面から複数の岩の柱が隆起するアクションに変化する。この攻撃は多段ヒットするので、サイズの大きな敵には効果抜群で、大ダメージを与えることができる。 エレンドの地ひびきハンマーは、破壊力がバツグン! うまくヒットさせたときの手応えは満点だ。 レア武器のほかに、ガジェットと呼ばれる特殊な装備品を入手できるのも、本作ならではのポイント。なかでも、敵を氷漬けにして一定時間動きを止める“フロストウェーブ”や、おとりを出現させて敵の注意を引き付ける“かりゅうどのおとり”は、レア武器と組み合わせて使うのがおもしろかった。 たとえば、先ほど紹介した地ひびきハンマーは、くり出すまでのスキが大きい。そこでフロストウェーブの出番。氷漬けにした敵になら、じっくり狙いをつけて攻撃を叩き込める、というわけだ。 ガジェットの中には、オリジナル版に登場した“トラップキャスター”もあり、トラップのワイヤーを設置して、触れた敵に大ダメージを与えることも可能。ガジェットでも『Horizon』のような狩りを堪能できるのは、筆者のようなファンにはたまらない。 トラップキャスターを駆使すれば、まとめてダメージを与えやすいので、複数の機械獣が相手でも怖くない。 アーロイたちの新たな魅力を引き出す充実のカスタマイズ要素 最後に、LEGOならではのカスタマイズ要素について紹介したい。LEGOの名を冠した作品なだけあって、本作はカスタマイズ要素が充実している。アーロイたちの見た目や拠点のカスタマイズも楽しめるほか、拠点では仲間のアップグレードやクエストのやり込み要素にもチャレンジできる。 アーロイたちの見た目は、村の施設で変更可能。衣装のラインアップは、『Horizon』の世界に登場するキャラクターや部族の衣装を再現したものだけではなく、ほかのLEGO作品のキャラクターの衣装を再現したものもあり、バラエティー豊か。新たな衣装は、ストーリーを進めたり、ゴールドブロックを入手したりすると増えていく仕組みだ。 プレイステーションの人気キャラクターをモチーフにした衣装も登場。ティルサがアクションゲーム『リトルビッグプラネット』の主人公・リビッツに変身!? また、村の施設や行動できるエリアは、ストーリーを進めるにつれて増えていき、マップで入手したコインを使って建物の見た目やカラーをカスタマイズできる。種類が豊富なうえ、ほかのLEGO作品のパーツも用意されているので、自分だけの村を作成してLEGOの世界を堪能することも可能だ。 施設は、屋根や庭、スポットなどを変更できる。購入できるパーツは、衣装と同じくストーリーの進行やゴールドブロックの入手数に応じて増えていく。 カスタマイズを進めるうえで悩ましいのは、衣装や施設のパーツを購入するには、キャラクターの強化にも不可欠なコインを必要とする点だ。キャラクターを強化したいけど、衣装や拠点のパーツも欲しい……。熟考した結果、筆者はキャラクターを鍛えてクリアーを急ぎ、あとでコインを稼いで衣装や施設のパーツを揃えることにした。 というのも、本作は冒険を進めていくと、強化された機械獣が出現する冒険に挑めるようになるほか、フリーモードでプレイすることも可能に。フリーモードならコイン稼ぎはもちろん、キャラクターのレベル上げも行いやすいので、コンプリートを目指したい人もじっくり遊べる内容になっていると感じた。 筆者のような『Horizon』シリーズのファンは、ストーリーやバトル、カスタマイズを通して、アーロイたちの新たな魅力が味わえる作品になっている。食わず嫌いをするのはもったいないので、興味のある方は、ぜひLEGOになったアーロイの新たな冒険を堪能してほしい。