日本・米国・中国の開発状況は?「自動運転」の現在地と私たちへの影響
自動車メーカーだけではつくれない!? 自動運転の鍵となる技術
自動運転は、カメラ、LiDAR(光学レーザー)、ミリ波レーダー、GPS、慣性計測装置(IMU)など、さまざまな技術に支えられています。なかでも重要なのが、カメラとLiDARです。 「自動運転車の“目”として、車線、標識、歩行者、信号など、周囲の状況を視覚的に認識するカメラ。光学レーザーを使って環境を3次元でスキャンし、物体までの距離や形状を正確に把握するLiDAR。この2つの技術が、自動運転技術の中核をなします。 そして、カメラやLiDARなどのセンサーから収集された情報は、専用のチップ(プロセッサ)やOSでリアルタイムに処理され、AIがその情報をもとに周囲の状況を判断して車の動きをコントロールするのです」 注目すべきは、自動運転専用のチップやOSはテクノロジー企業にしか開発できないことだと、神保さんは話します。 「自動車メーカーには、それぞれ独自の運転特性やブランドの“乗り味”があります。たとえば、スムーズな加速や減速のタイミングなどですね。自動車メーカーは、自社の自動運転車でもこの乗り味を再現したいと考えています。そのため、NVIDIA社などのAI半導体チップを用いて、乗り味のチューニングを行っているわけです。 つまり、自動運転車は、もはや自動車メーカーだけでは開発できないということ。ここに自動車業界のパラダイムシフトが生まれています。従来、自動車メーカーはエンジンや車体などハードウェアの開発・製造に強みを持っていました。ところが自動運転の時代に求められるのは、センサーやAI、ソフトウェアなどテクノロジーの領域なんです。世界の自動車産業は、その構造を大きく変えようとしているんですね」
世界中で進む開発レース! 日米中の動向は?
グローバル市場では、自動車メーカーやテクノロジー企業が、各社の強みと戦略を活かし、技術開発を進めています。ここではとくに、日本、アメリカ、中国における特徴的な動きを紹介します。 【日本】 ・日産<日本>が目指すのは“安心して任せられる”自動運転 「日産は、軽自動車やミニバン、EVなど幅広い車種に自動運転レベル2の技術を搭載。『スカイライン』や『アリア』などの高級モデルには、高速道路でのハンズオフ走行(手放し運転)を可能にする『プロパイロット2.0』を搭載しています。 日産が目指す自動運転技術は、“馬と人間の関係”。馬が人をサポートしながら安全に道を進むように、車もドライバーをサポートし、安心して任せられる存在になることを目標にしているそうです」