パリ在住フランス人研究者が「日本語の起源」を追究する理由。文字なき時代の古(いにしえ)の姿はここまでわかった!
実は歴史比較言語学による日本語研究は海外にはけっこうあるのですが、ほとんど英語の論文で、日本の先生たちは知らないことが多かった。 それもショックでしたね。海外の研究者は服部四郎(20世紀の言語学者。東京大学名誉教授)らの優れた日本の研究者に負うところが大きかったのに、日本人がそれにあまり注目していなかったわけです。 ――どうしてなんでしょうか。 ペラール ヨーロッパの言語は共通の祖先から進化してきたので歴史比較言語学の方法が使いやすいけれど、日本語は系統関係のある言語が少なく、当てはめづらいと思われていたからではないでしょうか。 でも、言語が常に変化しているのは、ヨーロッパでも日本でも同じなんです。ならば、日本語に対しても歴史比較言語学は有効に違いない。私はそう思って、日本語を対象にした歴史比較言語学が知られるよう、積極的に日本語で論文を書いています。言葉の面白さは地球のどこにいても変わりませんからね。 ●トマ・ペラールフランス国立科学研究所・東アジア言語研究所専任研究員、国立東洋言語文化学院講師。専門は言語学。特に、日琉語族の歴史的研究を行なっている。著書に『フィールドと文献からみる日琉諸語の系統と歴史』(分担執筆、開拓社)など ■『日本語・琉球諸語による歴史比較言語学』平子達也、五十嵐陽介、トマ・ペラール著岩波書店 3960円(税込)言語の研究のうち、言葉が歴史的にどのようにして変化してきたかを解明するジャンルを「歴史比較言語学」という。最新の研究成果に基づき、日本語や琉球諸語の例を多く取り上げて歴史比較言語学の手法を示す概説書 取材・文/佐藤 喬