日本製鉄と武田薬が劣後債、総額6000億円超-海外M&Aで大型調達
(ブルームバーグ): 日本製鉄と武田薬品工業が7日、劣後債の発行条件を決めた。発行額は合わせて6000億円を超え、国内社債市場は企業の合併・買収(M&A)に関連した大型の調達でにぎわっている。
日鉄は3本立てで総額1675億円を起債。2023年12月に米鉄鋼大手USスチールを141億ドル(約2兆2000億円)で買収すると発表しており、買収完了を前提に財務体質の改善を目的に発行する考えだ。武田薬はシャイアー買収後の19年に発行した5000億円の劣後債が10月に任意の償還日を迎えるため、今回新たに4600億円の劣後債を発行して一部を借り換える。
ブルームバーグのデータによると、24年度の国内事業会社の劣後債発行額は7日時点で総額7125億円となった。年度ベースで21年度以来の規模となる。調達額の一部を資本と見なせる劣後債は低金利環境下で企業の発行が増え、20年度に2兆円規模に成長。その後は日本銀行の金融政策正常化に伴う金利の先高観から発行は下火になっていたが、にわかに盛り返しつつある。
積水ハウスは1月に発表した米M.D.C.ホールディングスの買収に伴う借入金の一部返済に充てるため、総額2000億円の劣後債を早ければ7月上旬に起債する計画だ。ブルームバーグの集計によると、年内に事業会社の劣後債8580億円が初回コールを迎える予定で、このうち東海カーボンと住友化学が今後起債する見通しだ。
みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジストは、劣後債は企業側の資金ニーズがあるため今年も出てきたとした上で、発行コストは上がっていると話す。金利の不透明感が極端に高くなる場面では高いスプレッド(上乗せ金利)を払っても需要が集まらないこともあり得るとし、その場合は調達がローンに流れることも考えられると言う。
武田薬は最終償還年限が60年で発行から5年後に期限前償還(コール)が可能になる劣後債を起債、国債スプレッドは140ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に決まった。ブルームバーグのデータによると、これは最近発行された年限が近い劣後債の中で最も高いスプレッドの一つだ。日鉄が起債した3本のうち、発行から10年後に初回コールを迎える劣後債は137bpとなった。
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Takahiko Hyuga, Ayai Tomisawa