空き家をリノベ、投資呼びかけ 不動産業「岐阜まち家守」景観保護・開発の仲間に
岐阜市にある岐阜城の城下町、通称「岐阜町」(金華、京町地域)で、空き家の再生、利活用を通して景観の保護や地域活性化に取り組む不動産業「岐阜まち家守(やもり)」(同市、山本慎一郎社長)が、改修した空き家を賃貸として個人投資家に販売するビジネス「家持町人(いえもちちょうにん)」制度を始めた。建物オーナーとしてだけでなく、まちづくりに協力してくれる人に投資を呼びかける。高齢化で古民家の解体が進む中、不動産ビジネスによって収入を安定させ、開発を加速させる狙いだという。 制度では、同社が空き家の所有者から建物を購入し、開業希望者を探した後、改修した物件を投資家へ売却。投資家と「マスターリース」契約を結んで物件を借り上げて管理し、開業希望者にまた貸しする。同社は売却益やテナントからの管理費を、投資家は家賃収入から利回りを得ることができる。 投資家は「家持町人」となり、自身も地域の行事に参加したり、ネットワークを活用して協力者を増やしたり、まちづくりにも積極的に関わる。家持町人は江戸時代に土地と屋敷を所有した格の高い町人で、税などの負担をしながら政治への発言権を持ち、町の形成に貢献したことから、地域を盛り上げる一員として活躍してほしいという思いを込めて命名した。 家持町人の第1号には、NPO法人G-net創業者で武蔵野大教授の秋元祥治さん(44)=岐阜市出身=が決まり、紅茶専門店「アンノンティーハウス」の発送拠点として稼働している物件のオーナーになった。同市伊奈波通の岐阜善光寺で行われたセレモニーでは、「町人手形」を受け取った秋元さんが「共感や思いを投資できるという点に賛同した。これを機に岐阜町の仲間に入れてもらえたら」とあいさつ。伝統行事で良い席を提供するなど家持町人の“特典”も紹介された。 同社は、地元住民らが2021年に起業したまちづくり会社。伊奈波神社参道では、同社がリノベーションした古民家を活用し、ビールの醸造所とバーが新たにオープン。周辺にも複数の飲食店が出店し、まちのにぎわいを取り戻そうとしている。 「空き家は『子どもに残したくない負の遺産』と思われているが、貸す、売る選択肢もある。そのことが知られるようになって空き家所有者の相談が増えてきた」と山本社長。一方、岐阜町では22年までの5年間で約2割の古民家が解体されており(同社調べ)、「不動産会社として自社で集める資金には限界がある。新たに始めたビジネスでテンポ良く町を開発し、景観を守っていきたい」と話している。
岐阜新聞社