AIを音楽にどう活用するのか? YouTube Musicトップが考える音楽業界の現在地
今やミュージッククリップをアップしないアーティストはまずいないだろう。世界の音楽シーンを大きく変えたYouTube。その音楽部門トップであり、音楽業界の変遷を長年に渡って見届けてきたリオ・コーエンは、今をどう見ているか。 【写真】YouTubeとGoogleの音楽部門のグローバル責任者、リオ・コーエン
サブスク1億人超えのYouTube Music
米国の音楽産業における重鎮が、2017年以来の来日を果たした。現在は、YouTubeとGoogleの音楽部門のグローバル責任者を務めている、リオ・コーエンだ。 久しぶりの来日の目的は、うねりを上げて変わりつつある日本の音楽マーケットを体感すること。 「前回来日した2017年当時は、YouTubeに動画をアップする日本のアーティストは半分にも満たない状況でした。ところが今やほぼ100%になっています。しかも、CDの売り上げも伸びている。 日本のマーケットはとてもユニークなんです。そのマーケットを遠くから知ろうとしても無理。やっぱり直接、日本に来て、アーティストが何を考え、どんな不安を持ち、またどんな夢があるのか、じかにじっくり聞かないとダメですね」 アーティストたちが動画をアップするのは、当然だろう。YouTubeの成長ぶりは、すさまじい。今や世界中で毎日数十億人が見ているのだ。 また、YouTube Premium(広告なしの動画視聴とYouTube Musicの利用が可能)に関しては、サブスクが世界で1億人を超える規模になっている。 「日本の音楽マーケットは、アメリカに次いで世界で2番目の大きさです。アーティストは、日本のマーケットで成功すれば、それで十分かもしれない。でも、これからは世界で競ってほしいのです。もっともっと大きなものを目指してほしいし、グローバルに挑んでほしいと思います。」 そして今、音楽サブスクリプションは、音楽業界にとってピンチなのか、チャンスなのか、改めて問うてみた。 「今度、日本に来る時には、もうこの質問はしないでほしいですね(笑)。本当にもはや時代遅れな考えじゃないかと思います。全くピンチなんかではないと思います。なぜなら、何よりユーザーがどんどん増えているから。アーティストも大切だけれど、同時にユーザーの立場も考えないといけません」 ユーザーの増加は、広告収益、サブスクの収益に直結する。そのスケールが今、加速度的に大きくなっている。アーティストの収益も、そのスケールに伴って大きくなっていくということだ。 「しかも、もうレコードやCDを製造したり、輸送費をかけたり、お店の家賃もいらなくなりました。サブスクは、革命的に音楽ビジネスを変えたのです」