もう皮膚をかかなくて済む!? 錯覚でかゆみを軽減するデバイスが爆誕! 最先端サイエンスで迫る! かゆみとは何か?
■皮膚をかくと免疫が活性化される ところで、人間はどうしてかゆみを感じるのだろうか。かくと快感もあるかゆみは、痛みなどと比べると快と不快の間にある不思議な感覚だ。 「確かにかゆみは曖昧で不思議な感覚です。でも、私たちにかゆみという感覚が備わっているということは、進化の過程でかゆみを感じることにメリットがあったのでしょう」 そう言うのは、名古屋市立大学大学院医学研究科の森田明理教授だ。 「例えば私たちは、ケガをしたり病気になったりすると痛みを感じますよね。それは、痛みには『体に緊急事態が起こっているぞ』とシグナルを発する意味があり、それを知覚できるほうが生物として有利だったということです。 実際、痛みを感じられなくなる難病がありますが、その患者さんは大きなケガを繰り返してしまいます」 確かに痛みの役割はわかりやすいが、曖昧なかゆみにはなんの意味が? 「いくつか考えられます。ひとつは、痛みを生じさせるほど緊急度が高くない異物を知らせるシグナルとしての意味。わかりやすい例だと、皮膚の表面に虫が這うとむずがゆくなりますよね。それは、感染症などのリスクがある虫の存在を知らせるためではないでしょうか。 ハチに刺されると痛いのに蚊に刺されるとかゆくなるのも、危険度の違いに対応しているのでしょう。毒を持つハチに刺されると極めて危険なので痛みが知覚されます。蚊もウイルスを運んだりと危険な場合はありますが、毒ほどではないのでかゆみとして知覚するのだと思います」 また、かくことには免疫を活性化させる意味もあると森田教授は言う。 「皮膚の一番外側にある表皮の中に免疫をつかさどるランゲルハンス細胞(樹状細胞)がたくさんあるのですが、皮膚をかいて角質の表面が削られるとランゲルハンス細胞が樹枝状の突起を伸ばし、外部の物質を取り込みやすくします。 するとその物質に対する防御システムが作られますが、これが皮膚における免疫です。つまり、皮膚をかくことは免疫の強化につながるんですね」