最新研究結果からわかった!認知症を抑制するカギは?「食事・運動・社会参加・認知トレーニング……etc」2つ以上の活動に効果あり!
MCIから認知症になるのは1年で1割程度
MCIは認知症の前段階であるとされているが、MCIの人が必ずしも認知症になるわけでない。 「医療機関でMCIと診断された方が認知症になるのは、1年で5~15%くらいです。その他の人は、MCIのレベルに留まる人と、年相応の正常レベルに回復する方もいます。MCIの段階で、食事に気を使い、運動や認知トレーニングをするなどして生活を改善すれば、健常な状態に戻る可能性が高くなります。もしくは、認知症へと進む速度を遅くすることができるかもしれません」(国立長寿医療研究センター・櫻井孝先生、以下同)。 櫻井先生には、連載第5回(『リスクを低減する行動とは?(前篇)』)と第6回(『リスクを低減する行動とは?(後篇)』)で、認知症リスクを低減するための行動について教えていただいた。 当時伺ったお話では、「認知症リスクを低減するための行動を取るにあたっては、『病気の予防と管理』のほか、『運動・食事・社会生活(他者との交流)』を3本柱として日常生活に取り入れるのが大事とのことだった。 「認知症のリスクを低減させるためには、5tipsといわれる要素があります。運動、食事、社会参加、生活習慣病の管理、認知トレーニングの5つです。私どもでは、この5つを介入させる研究を行い、その結果、複数(2つ以上)の活動を行うことに意義があるとわかりました」
2つ以上の行動が有意義
その研究とは、国立長寿医療研究センターが2019年から名古屋大学、名古屋市立大学、藤田医科大学、東京都健康長寿医療センター、SOMPOホールディングス株式会社と共同で行ってきた『J-MINT研究』である。連載第5回でもこの研究について触れたが、詳しく書いていなかったので改めてご紹介する。 『J-MINT研究』とは、認知症予防を目指した多因子介入によるランダム化比較研究(Japan multimodal intervention trial for prevention of dementia)のことで、具体的には、生活習慣病の管理、運動、栄養指導、認知トレーニングからなる『多因子介入プログラム』が認知機能の低下を抑制できるかを検証したものである。「J-MINT研究」HPはこちら 「J-MINT研究では、認知症のリスクを持つ高齢者を対象に生活習慣病の管理、インストラクターによる運動教室、栄養士による栄養指導、タブレット端末を活用した認知トレーニングといった『複合的な認知症予防プログラム』を実施して、これらが認知症予防にどんな効果があるのかを明らかにしました。具体的には、65歳から85歳までの軽度認知障害を持つ高齢者531名を対象に、2019年から18か月間(1年半)プログラムを体験してもらい、日本で初めて多因子介入プログラムに認知機能低下を抑制する効果があることを検証しました。これらの結果は、わが国の認知症発症を減少させる大きな第一歩となることが期待されます」 研究の成果は、2024年4月に世界アルツハイマー協会の国際学術誌『Alzheimer‘s&Dementia』に掲載された。