大きな石の上に小さな祠 福岡県糸島市の住宅街にある「大石神社」
「本当かどうかは分からないですが」――。中村さんは前置きしたうえで、「災難が続発したと訴えることで、大石の切り出しを頓挫させようとした可能性があるようです」と話してくれた。いつしか、この石が大石神社と呼ばれるようになり、祠もつくられたそうだ。
その神社の様子をしばらく見守っていると、大石に向かってお祈りする人の姿もあった。神社の前で待ち合わせをしていた地元の女性(67)は「ここを通るたびにパワーをいただいています」と、両手を石に添えた。「何かお願いごとを?」と尋ねると、「いつまでも元気でいられますように」と笑顔が返ってきた。 中村さんの幼少期、田んぼに囲まれた大石の周辺だけが少し開けた広場のようになっていたという。「夕涼みをしたり、石に登って跳びはねたり。子どもの格好の遊び場でした」。周辺にも大きな石がごろごろと転がっており、石を求めてやって来た大人を手伝い、小遣いをもらうこともあったそうだ。
地域をむすぶ
現在では、福岡市のベッドタウンとして住民が増え、民家が立ち並ぶ大石地区。毎年8月おわりには、神社周辺で「大石祭り」が開かれ、多くの人でにぎわう。40回目を迎えた今年は、舞台を設けて高校生が太鼓を披露し、ミニコンサートも行われた。 「こんな狭いところに200人ほどが集まるんですよ」と中村さん。祭りに合わせて家族連れで帰省する出身者も多く、懐かしい顔がそろう貴重な機会にもなっている。
「大石があることで、地元の歴史が語り継がれ、人のつながりが保たれているのだと思います」。子どもたちが集まってゲームを楽しんだり、時にはカップルが休憩に訪れたり、大石神社は今も地域のシンボルとして住民らに愛されているようだ。 そんな光景を通りすがりに目にするたびに、「石の周囲で遊んでいた幼い頃を思い出します」と中村さんは話していた。
読売新聞