悶々とする硝子製作所5代目は「ユニコーン」に救われた 自社開発のガラスびんが大手企業や海外で評価
創業100年超の大川硝子工業所(東京都墨田区)は、ガラスびんの企画販売会社として、良品計画など大手企業とも取引しています。5代目の大川岳伸さん(45)は妻と社員2人という規模ながら、人気バンド・ユニコーンのグッズを制作したり、デザイナーや地元メーカーとの協業で過去のシリーズをリブランディングしたりして脚光を浴びました。2023年には水平リサイクルできるコップ「BINKOP」を開発。10カ国近くに輸出するなど、事業の幅を大きく広げています。 【写真特集】下請けだけじゃない 中小企業の技術がつまった独自製品
夢中になれるものが欲しくて
「音楽漬けの青春時代をおくりました。なかでも好きだったバンドがユニコーン。彼らが(2009年に)再結成すると聞いて、いつか仕事でかかわれないものかと思っていました」 大川硝子工業所は、ガラス工場で研鑽を積んだ大川清作・清造親子が1916年に創業しました。点眼薬のガラス容器を皮切りに、食料びん、化粧びんへとその事業を広げていきます。1979年、公害規制の対象になると、父で4代目の精一さんは断腸の思いで工場を閉鎖。製造を国内工場に委ねる企画問屋へとかじを切り、体制を整えました。 とくに承継についていわれることのなかった大川さんは、流されるままに大手飲料メーカーに就職。それなりに仕事には励みましたが、どこかしっくりこなかった大川さんはかねて興味のあった飲食店へ転職します。ハードな職場の息抜きがDJとしての活動でした。そして2008年、家業入りします。 「実家に戻って数年は、いたずらに時が過ぎていきました。大口の取引先や仕入れ先が倒産したときもどこかひとごとでした。そんなぼくの刺激になったのはDJを通して知り合った仲間たち。彼らはフリーランスの職業人、たとえばデザイナーとして自分の足で立っていた。そして生き生きとしていた。彼らの別の一面を知って、ぼくははじめて焦りを感じました」 「夢中になれるものが欲しかった」大川さんは、自社商品の開発を思い立ちますが、おいそれとはつくれません。びんをいちからつくろうと思えば金型が必要になりますから何百万円とかかります。