10月4日は中秋の名月 江戸時代のお月見団子はかなり大きめだった?
月の兎の悲しい物語
団子以外にも、栗や柿、葡萄、枝豆、里芋といった秋の実りを月にお供えしていたことがわかります。こうした秋の食べ物と一緒に飾られるのは、秋の七草。萩、すすき、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗で、『万葉集』にある山上憶良の二首の歌に由来します。 秋の野に 咲きたる花を 指折およびおり かき数ふれば 七種ななくさの花 (『万葉集』巻八 一五三七) 萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花 (『万葉集』巻八 一五三八) ちなみに、まだ朝顔が日本に伝来していなかった当時、朝貌(あさがお)は桔梗をさしたといわれています。また、稲に姿のよく似たすすきは、稲の収穫を前に稲に見立てて特に好んで飾られます。
月といえばうさぎですが、これは『今昔物語』の説話に由来します。行倒れた老人に扮した神様に元気になってもらうため、自らの肉を食べてもらおうと身を火に投じて亡くなったうさぎに心を打たれた神様が、うさぎの行いを後世に伝えるべく、みんなが愛でる月にうさぎを昇らせたというお話です。月にうさぎというかわいいイメージがちょっと変わりますが、これもやはり、月の表面がはっきりと見えるこの季節に生まれた物語なのでしょう。 さて、今年は綺麗な十五夜お月さんが見られるでしょうか。観月祭や月下に雅楽を奏でる管弦祭を催す神社もありますので、お参りがてら出かけてみるのもいいかもしれませんね。 (福徳神社<東京・日本橋>宮司 真木千明<まきちあき>) 著者プロフィール 真木千明(まきちあき) 昭和29年、福岡県生まれ。福徳神社(東京・日本橋)宮司。國學院大學卒業後、日枝神社、水天宮(東京)を経て現職。真木家は代々、福岡県久留米市鎮座の水天宮の宮司を務める社家の生まれで、幕末の志士・真木和泉守保臣の直系子孫。著書に『ご縁で生きる~ひとりでがんばらない処方箋』(小学館)がある。