YOASOBIが紡いだ5年間の軌跡と新たな物語 “かけがえの無いみんな”へ想いを届けた記念すべき初ドーム公演
デビュー5周年を記念して行われた初のドーム公演『YOASOBI 5th ANNIVERSARY DOME LIVE 2024 “超現実”』が開催された。本稿では、11月10日に東京ドームで行われたファイナル公演の模様をレポートする。 【写真多数】5万人が熱狂! YOASOBIドーム公演ライブカット 超巨大LEDビジョンに映像が映ると、YOASOBIのロゴに続きカウントダウンを告げる数字が映し出され、約5万人によるカウントダウンが始まった。オーディエンスが腕に装着した制御型LEDライト「FreFlow®(フリフラ)」が光り始める。東京ドームという巨大な装置をフルに使った“超現実”なステージがここから始まるのだという予感がひしひしとこみ上げてきた。ビジョンをモンスターの爪が切り裂き、ボーカルのikuraが「ぶち上げていきましょう!」と開幕宣言。 まずは「セブンティーン」、早速約5万人のOiコールが響き渡った。ikuraが「遊ぶ準備はできてますか? 東京!」と声を上げる。イントロからOiコールがさく裂した「祝福」、続いて「怪物」、「UNDEAD」と初っ端からえげつない流れだ。ikuraは「思いっきりかかってこいよ、東京!」と挑発し、限界なんてないと言わんばかりの気合の漲りっぷり。コンポーザーのAyaseを擁する楽器隊の演奏も、恐ろしいほどに逞しい。バンドと呼応するようにオーディエンスのテンションも右肩上がりだ。2019年11月、「夜に駆ける」のMVをYouTubeに公開してから5年ーー押しも押されぬ国民的アーティストとなり、海外からも強い支持を受けるYOASOBIの記念すべき晴れ舞台。遊園地のようなセットや演出も相まって、序盤から凄まじくタフでエンターテインメントなライブが展開された。 YOASOBIの5年間の軌跡がビジョンに映し出される。2024年から始まり、時は2023年、2022年、2021年と遡り、2020年3月で止まった。初音ミクが歌う「たぶん」の音源が流れた後に、ikuraが今現在歌う「たぶん」が響き渡った。アリーナエリアのセンターステージには部屋のセットが現れ、Ayaseはこたつに入って作曲ソフトの波形が映ったPCの画面を眺めている。これはおそらくAyaseがボカロPとなり、YOASOBIの楽曲を作り始めた始まりの景色だろう。ikuraはこたつの近くのソファに座り、「たぶん」を歌う。曲が終わると、Ayaseが「ここはYOASOBI始まりの地と言っても過言ではない、僕が5年前にYOASOBIを始めた時に住んでいた家を再現した」と明かした。バンド活動が止まり、ふたりの妹の部屋に居候していたAyaseは「夜を駆ける」から始まり「たぶん」まではこの場所で曲を作っていたのだ。原点を再現したシーンもあれば、ライブ翌日にリリースされた新曲「New me」の披露もあった。ウキウキするようなリズムに乗せて歌われる新たな始まりの物語。“自分を変えられるのは自分だけ”という最新のYOASOBIのメッセージがドームを満たしていった。 不穏なイントロとともにパープルのレーザーが飛び交い、オーディエンスがどよめく中、ikuraが「何の曲かわかるよね? 全員の声が聞きたいです! まだまだ足りないな!」と煽る。キッズダンサーたちが踊るセンターステージのikuraが立つ一部がせり上がり、満員の東京ドームの真ん中で「アイドル」を歌う姿はヘビーな宿命を背負いながらも万人に幸せを与えるアイドルという存在が憑依しているかのようで、最早神々しさすら感じた。ikuraをさらに輝かせるために轟く5万人のOiコール。時代のアンセムであることを証明した「アイドル」の爆発力に、ドームのあちこちから感嘆の声が上がっていた。 特別な余韻に重ねるかのようにAyaseが興奮気味に話し始める。「5年前はこんな景色が見られてその中心に自分がいるなんて思っても見なかった! “超現実”は5周年をみんなで祝おうぜっていうイベントです。でも俺もikuraもその前から音楽をやっていたので、5年だけじゃない。人生分全部を詰めたいと思って準備してきました。みんなも含めて、いろいろな辛いことを積み重ねた先で愛する同じ音楽のもとに集って、こんなデカい声が聞けるとは思わなかった」とAyaseがオーディエンスに感謝を伝えた後、「俺の純粋なクリエイターとしての葛藤を詰めた丸裸の楽曲」と紹介して披露したのは「モノトーン」。人間の絶対的な孤独感と連帯を宿した曲を、ikuraはひとりきりのセンターステージから切実に歌い上げた。 ikuraが「私も少しだけ自分の話をしてもいいですか?」と前置きして話し始めた。YOASOBI結成当初、18歳だったikura。突然生まれたikuraという存在と日に日に大きくなっていくYOASOBIを昇華し、必死にくらいつく日々だった、これまでに感じたことのない孤独と出会い、悩み続けた5年間だった、と。「ステージ上でどんなikuraになりたいか、皆さんにどんな“ikura”をもたらすことができるか考えていった。ぼやけていたikuraの輪郭にだんだん触れるようになったと感じてます。悩むこともあるけれど、ファンの皆さんやチームのみんなという孤独を和らげてくれる存在がいる。その人たちと一緒にワクワクする未来や新しい景色を見たいし、輝くikuraでありたい。ikuraとして生きていく覚悟を決めました」「自分の夢、チームの夢、オーディエンスの夢、全部の夢を乗せて朽ちることなく前に進み続けたい」と宣言し、「音楽が鳴り続けてほしい」という願いを込めて歌われたのは「アンコール」だ。〈明日世界は終わるんだって/それならもう/その時まで何度でもずっと/好きな音を鳴らそう〉ーーライブというこの瞬間だけの体験の尊さを高めた「アンコール」。言わずもがな、YOASOBIは小説を音楽にするユニットだ。原作小説と音楽にどこまでも誠実に楽曲を生み続けてきたわけだが、ライブという場所で自らのライフストーリーに基づいた想いをオーディエンスに直接伝えながら、原作小説と音楽の力が最大限に伝わるような誠実なパフォーマンスを届ける姿勢にぐっときたオーディエンスは多いはずだ。