60年変わらなかった東京都の「不健全図書」、漫画家たちの願いで「8条指定図書」に改称 「全国にも広がってほしい」
東京都は、過激な性描写や暴力の描写があるとして、条例で未成年への販売を禁止している図書について、これまで60年にわたり使用してきた「不健全図書」という名称を「8条指定図書類」に変更した。東京都が9月9日に開いた青少年健全育成審議会で報告され、すでに公式サイト上で変更されている。 これを受けて、「不健全図書」という言葉のイメージが悪く、流通に弊害があるとして、名称変更を求めてきた日本漫画家協会の有志らでつくる表現活動部は9月13日、都庁で会見した。 漫画「はじめの一歩」などで知られる森川ジョージさんは、「大変いいことだと思っています。不健全図書になってしまうと、流通に弊害があり、収入を絶たれる作家も出てきています。東京都から全国に波及してほしいです」と語った。
●「不健全図書」に指定されただけで作家に「被害」
漫画家協会の有志でつくる表現活動部が、「不健全図書」の名称変更を求めるきっかけとなったのが、ボーイズ・ラブ(BL)を描く漫画家の星崎レオさんの作品が、2022年4月に「不健全図書」に指定されたことだった。星崎さんの作品は書店やAmazonなどのネット書店で取り扱いがなくなったという。 星崎さんは会見で、現在も「不健全図書」に指定された作品は、現在も入手できない状態が続いていることを明かした。また、自身の創作活動にも影響があったと語った。 「お上からダメって言われたこともありますが、ネットでは『性犯罪者』と言われたりしたことなどもあって、1年ほど苦しみました。性的な表現を描けなくなったこともあります。 『不健全図書』の指定は、描いたものが否定された、悪いものを描いたと言われたというふうに、作家さんの心にダメージを与えてしまうと思います」 都の青少年健全育成条例で定められた「不健全な図書類(不健全図書)」は、審議会の答申を経て指定されると、18歳未満の青少年への販売などが禁じられる。全国でも同様の条例があり、「不健全図書」「有害図書」といったレッテルを貼られると、流通から締め出され、未成年だけでなく、大人への販売も実質的にできなくなってしまうという。 こうしたことから、漫画協会表現活動部は3月、漫画家112人から署名を募り、都議会の各会派に対して、改称を求める要望書を提出していた。