退職金税制の見直しを再び議論へ
移行措置を講じつつ制度を廃止することが適切か
しかし、同制度が時代遅れであること、また、政府が目指す、前向きの転職による労働市場の流動化に逆行するものであることは明らかだ。 企業が従業員の離職を防ぐために、長く働くほど退職金の支払い額が累積的に増えるような制度を導入するのは自由であるが、政府が税制を通じて長期雇用を促すインセンティブを雇用者に与えるのは適切ではないだろう。 退職時に受け取る手取り額が大きく減少して、退職後の生活設計が狂うことがないよう、退職金税制を一気に廃止することは適切でないだろう。しかし、移行措置を講じつつ、段階的に廃止していくことは必要なのではないか。今年の議論は見送りとなっても、来年以降は議論が進んでいくことを期待したい。 (参考資料) 「退職金税制の見直し、再び議論 昨年は具体化見送り 政府・与党」、2024年11月24日、時事通信 「退職金課税議論が再始動 勤続20年に優遇 転職増で見直し 与党・政府税調」、2024年11月16日、産経新聞 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英