献体登録者が急減 学生教育や医師の訓練に支障も
自らの遺体を医学のためにささげる「献体」の登録者が、広島県内で減っている。かつては希望者が多く抽選していたことから、足りていると誤認されているという。登録者はここ10年で約千人減り、1471人(1日時点)。2千人を切る状況が続けば学生の解剖学実習や医師による手術の訓練に支障が出かねず、関係者は「レッドゾーンに入った」とみる。 広島大白菊会の登録者数の推移 献体は、生前に登録した人の死後、遺族が医師や歯科医師の養成大学に遺体を無報酬で提供する仕組み。実習などに使われた後は、大学側が火葬し、2~3年のうちに遺骨を遺族に返している。 県内の登録先は、広島大霞キャンパス(広島市南区)内の「白菊会」がある。事務局によると1963年の発足時から登録者は徐々に増え、2000年に最多の2791人を数えた。遺体の管理体制も踏まえ、同会は毎年の新規入会を13年まで抽選制とし、全登録者数を適正規模の2500人程度に抑えようとしてきた。 この影響で登録者は19年に2千人を割り込み、その後も年100人規模で減少。事務局は「今も抽選制だと誤解している人は多い」と説明する。 また親族ぐるみで登録する人も多いことから、家族の小規模化も一因とみる。登録時に必要な親族2人の同意を得られない人や、遺骨の引き取り手が高齢の配偶者で「返還まで待てない」と退会する人もいるという。 広島大大学院の池上浩司教授(解剖学)は「学生の解剖学実習は人体の構造を学び、医療者としての倫理観を養う上で欠かせない」と強調する。 また広島大は19年度、遺体を使った手術の手技訓練を開始。献体の需要は高まっているという。池上教授は「このままでは実習も訓練も立ちゆかなくなる」と危ぶんでいる。
中国新聞社