“手作り漬物”が買えなくなる…法改正で6月から販売やめる生産者が続出 岐路に立つ日本の食文化
こだわってきた自家製の味 継続を決めた生産者は
風和里にたくあんを出品している松山市の越智基康さん(80)は、元々住居とは別に作業場を設けていたため、新たに室内にシンクを2つ設置することで許可を取得できました。 「うちのたくあんは甘口で『楽しみにしとるよ、辞めたらいかんよ』と言ってくれる人もいて、その言葉を励みに続けないかんと思いました」 「許可制になるのは仕方ない気持ちはあるけど、今回の改正はかなり厳しいですね。図面を描いて保健所に持っていきました。うちは作業所の外に大きいシンクがあるのに、中に2つ必要なんだと言われて…10万円くらいの費用で済みましたが。まわりの方はみんな辞めてしまいましたよ」 5月27日現在、松山市内で漬物の製造販売の許可を取った事業所は26件。愛媛県全体(松山市以外)では112件となっています。 微生物による食品発酵に詳しい愛媛大学の阿野嘉孝准教授は「色んな方が漬物を自由に作れる環境で、専門知識が無い方がやることによって食中毒がおこりうる。それを規制したいのが今回の背景にあります。かといってきちんとできている方にも厳しく、作れなくなるというジレンマ」とした上で、次のように話します。 「発酵食品は地域に密着して、試行錯誤から生まれた技術が家々で継承されてきた。ひとつ事故が起こるとみんな規制になってしまう。一斉に線引きするのでなく、事故が起こらないようここに注意しましょうと、漬物樽の殺菌方法など改めて行政が指導に入るとか、何か助け舟が出せないものかと思います」 (取材・文 / 津野紗也佳)